アインクラッド編
74層攻略戦
久方振りの死闘を 04
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状況を整理した僕に、回避の選択肢はなかった。
雪丸を回転させるスピニングシールドの発動とブレス攻撃の発動がほぼ同時。
青白い光に照らされた視界の中で、僕は自分のHPバーがガリガリと削れていくさまを見た。 ポーションで8割ほどまで回復していたはずのHPが凄まじい速さで喰われていく。
「何故、何故避けなかった……? 貴様であれば、回避は容易かったはずだ」
「あなたたちが後ろにいるのに避けられるわけないでしょ?」
「なっ……我々は貴様の敵だと言うのに、それでも我々のために……」
「それは違うよ。 あなたたちのためじゃない」
既に危険域へと突入したHPバーから意識を離し、僕は言う。
「嫌なんだ。 誰かが死ぬのが。 僕はもう、誰かが死ぬのを見たくない。 もう、あんな思いはたくさんだ。 だから……」
ギリッと歯を食い縛り、そんなことをしてもシステム的に無駄なことを片隅で考えながら、それでも現状に反発して僕は叫ぶ。
「僕は誰も死なせない!」
そんな咆哮と同時にブレス攻撃が止む。
僅か数ドットだけ残したHPを見ながらも僕は駆け出していた。
今までのパターン通りであれば、これからあの範囲攻撃が使用される。 それを阻止するために雪丸を後ろに流したまま走り、そしてソードスキルを発動させる。
雪丸が鮮血色の光を纏う。 使うソードスキルは『血桜』。
グリームアイズには大したダメージを与えられないだろう。 それでも、あの範囲攻撃を止めることは可能だ。
後方に流していた刃先が床を掠めながらグリームアイズへと向かう。 咆哮を上げて晒け出された首元へと、振り上げの一閃。
次いで訪れる硬直が解けた瞬間には、腰から抜いたポーションを飲み下すのと飛び退くのとを同時に実行していた。
「キリト!」
「わかってる!」
僕の声に一瞬の間も置かず、左右それぞれに剣を装備したキリトが僕とグリームアイズとの間に割って入った。
頼もしい兄の背中を見つつ更に後退した僕の視界に、泣きそうな顔のアマリが映る。
心配しながらも駆け寄って来なかったのは、僕の指示を遂行するためではなく、僕を信じてくれていたからだろう。 どれだけ危機的状況であろうとも、僕が必ず生きて帰ると、そう信じてくれているからだろう。
そんな愛する妻に笑顔を返してから、僕はメニューウインドウを開いた。
雪丸の耐久値は限界に近い。 その証拠に全体がひび割れ、刃は所々が欠けている。 使い物にならない相棒に心の中で礼を言い、ストレージから取り出したのは予備の薙刀……ではない。
現れたの
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