Lost Memories
プロローグ
2 星屑ヶ原と金髪の少女
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郷に帰ってきたみたいな、そんな安心した気持ちになれる。
「やっぱり、不思議な場所だよ」
自然と、そんな言葉が出てしまった。
誰かに聞かれたりしていないかと、辺りを見回しても、やはり人は居ない。
少し寂しいけれど、おチビさん達の合唱が、そんな感覚を薄めてくれる。
「よし、じゃあ、始めますか!」
それからどれぐらい時間が経っただろう。僕は時間を忘れて観測を続けていた。
最初こそ操作に戸惑ったけれど、動かす向きだとか、微々たる操作を理解すれば、案外どうにかなるものだ。調子よく、気持ちよく。のんびりと、そして心行くまで星空を堪能した。
夏の大三角がもう、東の空にしっかり見えている。とすれば、今の時刻は大体2時から3時といった所かな。
合唱団の歌声も、あまり聞こえてこなくなり、寒気が見え始めた頃だ。
ん? 僕はほんの些細な変化に気が付く。
「あの恒星、なんか大きくなってる?」
指し示すその先には、ベガ。
まあいいや、と、それ以上に気にすることは無かった。
それにしても、本当に星空は美しい。本当に、こんなものが現実に、存在してもいいのだろうか。そんな気持ちにすらなってくる。
三等星は当たり前として、四等星、五等星……なんと、六等星まで見える。
わぁ、こんなにいい環境、他にあるのかなぁ。
世界でただ一人、自分だけが、この星空を眺めているような、そんな気分にさえなってくる。
自分以外の人が居たならば、その人と、この感動を共有したい。
もし居なかったならば、この星空を独占している感動を味わいたい。
このどちらかの目的を達するために、辺りをきょろきょろと見回す。
「あっ」
居た。
少し遠い所に、月と星明りのお蔭で見えるギリギリの場所に、その人は居た。
僕の声に気が付いたのか、相手はこちら側を見ているようだ。
ここにいるのも何かの縁だ。これからもここには来るだろうし、挨拶はしておいた方がいいだろう。
僕はスコープを片づけて、その人影の方へと向かって行く。
「こんばんは」
僕は近づいて、挨拶をしてみる。
彼女の鮮やかな金色の髪は、星明りに照らされて、優しく光っている。
そう。美しかった。
これまでにこんな美しい人、見たことない。その姿はまるで天使だ。サラサラな金髪のロングヘアー。美しさを際立たせる白いベール。自分と同じぐらいだろうか。それなのに放たれる気品あるオーラに、僕は思わず見惚れてしまった。誇張なんて一切ない。
「あなたも、見に来たのね」
彼女が放った最初の一言だ。この時僕の想像では、優しく微笑んでいると思っていた。
しかし、よく見ることで気が付く。彼女は無表情であった。
感動的な星空なのに
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