第171話 襄陽城攻め4
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めた。胴を突かれる者、首を突かれる者、頭を潰される者と次々に絶命し倒れていった。彼は側に敵がいないことを確認し視線を周囲に向けると、星と愛紗の姿を確認し、視線を篝火の点る内城の方に向けた。
「蔡徳珪――!」
正宗は双天戟の矛先を内城に向けて突きつけた。
「余は討伐軍総大将・劉正礼である! 恐れ多くも皇帝陛下に弓を引きし大奸賊。皇帝陛下のご下命により貴様を余が誅殺する!」
正宗は大声で内城に向けて叫んだ。内城から正宗に向けて一斉に矢が斉射された。矢の雨を正宗は涼しい顔で双天戟を回転させ薙ぎ払った。星、愛紗も正宗と同じく矢の雨を綺麗に薙ぎ払い、正宗兵達は矢の圏外に移動し矢の雨から逃れた。不幸だったのは正宗兵達と交戦していた蔡瑁兵達だった。彼らは戦闘で疲労した重い身体で味方の攻撃から必死に逃れようとするも適わず針鼠となり動かぬ屍となった。
星と愛紗は敵兵とはいえ味方を情け容赦なく射殺した所行に怒りを覚えたのか内城を睨み付けた。
「夜明けとともに総攻めを行う! 蔡徳珪、名門の矜持があれば生き恥を晒す真似だけはするでないぞ!」
正宗は内城に向け再度叫んだ。彼は星と愛紗に視線を移し目で合図をした。
「撤退だ!」
「撤退する!」
星と愛紗は声を合わせ正宗兵達に命令を出した。正宗は馬を方向転換すると元来た道を去りだした。星と愛紗も正宗に続く。その後ろを追うように正宗兵達が追っていく。正宗軍の動きは一糸の乱れもない整然としていた。その様子から正宗軍の騎兵の練度が窺えた。孫堅も虚ろな瞳で周囲を疾駆する正宗軍の騎兵達の姿を視線で追っていた。
正宗達は孫堅軍に合流し彼らの撤退を援護しながら戦線を離脱していったが、蔡瑁軍の追撃はなかった。蔡瑁軍も城内に攻め込まれ浮き足立ち余裕がない状態にあったのかもしれない。程なく朱里が編成した後詰めを率いる泉が兵五千を率い正宗達に合流した。正宗達は泉に警護を受け、味方の本陣まで無事に辿りついた。
正宗が無事撤退したことを伝令から受けた朱里は孫策へ伝令を出した。孫堅が瀕死の重傷を負うも、正宗の治療で命を取り留めたことを知らせられた孫策は血相を変え慌てて西門攻めを中断し、兵の撤退を他の者に任せると慌ただしく正宗の本陣に単身で駆け込んできた。
「孫伯府でございます。母がここにいると聞きまかり越しました」
孫策は落ち着きない様子で略式の礼で正宗の本陣に入ることを願いでていた。本陣の入り口を守る守衛は孫策の名を聞くと中に入るように促した。正宗が既に話を通していたのだろう。
孫策は守衛の後を着いていくが、守衛が歩いて引率することに苛々しているようだった。段々眉間に皺を寄せ守衛の頭を背後から睨んでいた。
「孫伯府殿ではありませんか?」
苛々を募らせる
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