第171話 襄陽城攻め4
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
短剣を魏延に差し出した。
「魏文長、この短剣をお前に預ける」
魏延は顔を上げ、正宗が差し出す短剣を見た。
「魏文長、日が昇れば襄陽城を総攻めすることになるだろう」
正宗は神妙な表情で魏延を見た。魏延に残された時間は日が昇るまで。それまでに彼女の子分達を連れて襄陽城を抜け出さないと総攻めに巻き込まれる可能性があった。
魏延も正宗が言わんとしていることを理解したのか唇を真一文字にし覚悟を決めた様子だった。
「魏文長、その短剣を私に返しに来い。必ず生きて帰ってくるのだ」
正宗は表情を崩し笑みを浮かべ言った。魏延は正宗の想いに感激したのか顔を伏せ、短剣を受け取り懐にしまった。二人の様子を孫堅と甘寧は見つめていた。
「清河王、魏文長必ず生きて戻ってきます!」
魏延は力強い声で正宗に答えた。正宗はしばし魏延を感慨深げに見ていた。
「話は終わりだ。お前はお前の為すべきことを為すために行ってまいれ」
正宗が魏延に言葉をかけた。魏延は深々と頭を下げ去って行った。彼女の後ろ姿を正宗は見送ると、視線を現在正宗軍と蔡瑁軍が交戦している方向を凝視した。
「もうここに用はない」
正宗は短く誰にも聞こえない声で独白すると踵を返し城の中央を眺めた。正宗軍の二度の襲撃で蔡瑁軍は完全に瓦解していた。城中央への道を阻む者は誰もいない。西門で孫策と交戦している蔡瑁軍が東門の異変に気づき動く可能性があるが、孫策が西門で暴れている以上、動くのは容易ではないだろう。
「孫文台、動けるか?」
正宗は孫堅の様子を確認するように視線を移すと、孫堅は甘寧に抱えられながらふらつく足取りで立ち上がろうとしていた。彼女の顔色はあまりよくない。傷が全て塞がっていても失った大量の血の影響で身体が思うように動かないようだった。それでも孫堅は足腰に力を入れ自力で立ち上がろうとしていた。
正宗は孫堅をしばし凝視し溜息をつき、再び下馬し孫堅に近づいて行った。
「甘興覇、変わろう」
甘寧は正宗の言葉が一瞬理解できない様子だった。それは孫堅もだった。
「私が孫堅を連れていくと言っているのだ。孫堅を連れてでは撤退もままならんだろう」
正宗はそう言い甘寧を強引に退け、孫堅に肩を貸した。甘寧は押し出されるように大人しく退いた。
「車騎将軍、御服が血で汚れます」
孫堅は気だるそうな顔で正宗に遠慮がちに言った。正宗は孫堅に笑みを浮かべた。
「孫文台、怪我人が下らぬ理由で気を遣うものでない。戦装束が血で汚れるなど当然のことだろう」
正宗は孫堅の言葉などお構いなしに彼女の腰に手を回すと軽々と抱え上げた。孫堅は正宗にお姫様だっこされた状態になり、彼女は落ち着かない様子で視線が泳いでいた。だ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ