10.私はあなたが好きです
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びれているようだ。部屋の明かりに関しては私と同じことを考えたのか、彼も照明をつけようとはせず、ただ卓上スタンドのみをつけた。
私はすぐ紅茶を淹れる準備に入った。彼は自分がお茶を飲みたい時に私たちの分も併せて一緒に淹れてくれるのは、今も変わらない。ただ、最近は私に紅茶を催促してくれることも増えてきた。私が淹れた紅茶を喜んで飲んでくれることが、私にはうれしかった。
「ショートブレッドって残ってたっけ?」
「残ってるヨ? 食べマスカ?」
「うん」
今日の出撃前のティータイムで食べたショートブレッドの残りを準備し、私は今しがた淹れ終わった紅茶と共に提督に渡した。提督は、いつものように私の紅茶の香りを楽しみ、ショートブレッドとともに堪能した。
「う〜ん…やっぱ逸品だね」
「当然ネー。ワタシのテートクへのLoveがこもってマスからネー」
「はは……」
彼が紅茶を飲んでいるその背後の窓から、夜の鎮守府が見えた。灯台が港を照らし、鎮守府各所に輝く明かりが、いつもより美しく見えた。私は、吸い寄せられるように窓に近づき、鎮守府の夜景を眺めた。キレイな半月の月明かりが、鎮守府と執務室をほんのりと照らしていた。
「wow…beautiful……」
「だね」
「鎮守府ってこんなに美しかったんデスね」
「ああ。これが金剛たちの帰るべきホームで、守るべき場所なんだ」
「ワタシたちのホーム……」
「うん」
私は彼の顔を見た。彼は、とても穏やかな表情で鎮守府を眺めていた。その顔が、いつかの時のように、ひどく脆いがとても美しい、ガラス細工の芸術品のように感じた。
「テートク」
「ん?」
「ワタシはあなたが好きデス」
私は自然とこの言葉を口にしていた。普段からLoveを込めたとかハートをつかむとか言っていたが、それとは重みの違う言葉を、私は驚くほど自然に、口に出してしまった。『今が伝えるチャンスだ』という気負いはなかった。『言わなければ後悔する』という葛藤もなかった。自然と、無意識のうちに、スッと口から出ていた。
「うん。知ってる」
そう答えた彼の表情は、いつもの優しい顔だった。他の子たちに向ける微笑みとは微妙に違う、五月雨にすら向けることのない、私にだけ見せる美しい表情だ。私は、彼のこの表情と眼差しが好きだった。彼のこの表情が、私だけに向けられることがうれしかった。
「気付いてたんデスカ?」
「うん」
彼はそう言うと、自身の机の引き出しを開き、中から一つの小さなケースを取り出した。
「金剛、“ケッコンカッコカリ”って知ってるよね?」
ケッコンカッコカリ。私を含む、提督を慕うすべての艦娘の憧れであろう制度。限界まで練度を高めた艦娘だけが受け取れる、提督と心を通わせ、さ
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