暁 〜小説投稿サイト〜
彼に似た星空
9.おばあちゃんとサラリーマン。あとケツ。
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府内でも誰とでも仲良くなっていた鈴谷だったが、まさかそのコミュ力は鎮守府から遠く離れたこの地でも発揮されるとは思わなかった。

 感心しながら鈴谷を眺めていると、霧島が戻ってきた。手には、霧島が発見したであろう旅館までの道順が表示されたノートパソコンを持っていた。

「お姉様! 宿泊施設を見つけました!! ここから車で15分ほど行ったところの山の中です!!」
「oh! リサーチしてくれてサンキューねー霧島〜!!」
「これもあちらの方がネットに繋がせてくれたおかげです!!」

 霧島はそう言って、ベンチに座って再度スマホをいじっているサラリーマンを紹介してくれた。助かった。彼が力を貸してくれなかったら、私たちは宿泊施設を見つけることもなかったし、霧島が顔を赤くするという貴重なシーンを見ることもなかっただろう。

「さっきは妹の霧島の力になってくれてサンキューね。ワタシは霧島の姉で、金剛デス」
「ぁあ、いえいえ。困った時はお互い様ですから。つーか海外の方ですか? その割には名前が……」
「イギリスからの帰国子女デース」
「ぁあなるほど。通りでちょっとカタコト…ん? てことは霧島さんも?」
「私は生粋の日本生まれ日本育ちの日本人ですよ」
「あれ……なんかめくるめく昼ドラの匂いが……」
「あーいや、大丈夫です複雑な家庭事情とかはないですから!!」

 慌てて弁解をする霧島がなんだかおかしかった。おそらくこのサラリーマンの頭の中では、私と霧島との間に複雑な家庭事情や愛憎入り乱れるメロドラマ的姉妹関係がイメージされていることだろう。本来なら否定すべきことなのだが、そこは霧島に任せた。なんとなく、このサラリーマンは霧島と話をしたそうに見えた。

 バスターミナルを後にしてサラリーマンと別れた私達は、タクシーで旅館に向かった。すでに何時間も椅子に座って移動していたため、今回の数十分の移動はとても短いものに感じた。それでも途中、鈴谷は『金剛さん…ケツ痛い…マジで…おばあちゃんたちのせいだ…』と言っていた。

 霧島が見つけた宿泊施設は、周囲に田んぼが広がる、温泉のある旅館だった。宿泊手続きをして部屋に荷物を置いた私たちは、早速自慢の温泉に浸かり、この長旅の疲れを癒やした。

「う〜ん…鎮守府の入渠施設とはまた違いますけど、温泉もキモチイイデース……」
「ホントですね〜お姉様…疲れが溶けてなくなっていくようです…」
「ホントそう…鈴谷のケツの痛みもひいていくよ…ふぃ〜」
「鈴谷…そろそろケツ以外の話が聞きたいネ……」
「マジで痛かったんだから…おばあちゃん遠慮しなさすぎだよ…バッチンバッチンくるし……」

 温泉から上がった後は部屋に戻り、食事に舌鼓をうった。間宮さんや鳳翔さんの食事とはまた違った美味しさだった。ここに
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