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彼に似た星空
9.おばあちゃんとサラリーマン。あとケツ。
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を上げていたケツへの平手打ちの連撃は、今の鈴谷には相当に堪える肉体言語であろう。

 一方の霧島の方も苦戦しているようだ。この地方の方言の訛りはかなりキツく、今係員のおっちゃんと会話している霧島の表情がどんどん苦笑いに変わっているのが、離れた場所にいる私からもよく見える。

「あれ? ひょっとして、おねーさんも艦娘ね?!」
「え…いやまぁ…はぁ…元、艦娘ですが……」
「ほぉお〜そうね〜!! いや、うちは海がなかで、艦娘なんか見たことなかでなぁ〜!!」
「は、はぁ…いや、てかどこかホテルとか…」
「そん服がまたよかねぇ〜!! 艦娘の特注品とかじゃろ?」
「いやあの…」

 おっちゃんはどうも人の話を聞かないタイプなようだ。相手の反応を見ながら会話をしていく霧島とは会話の相性が悪いタイプとも言える。ひと通りおっちゃんからの一方通行な話を終えると、霧島は私のもとに帰ってきた。

「お姉様すみません…何も情報が得られません…話も聞いてくれないし、訛りもよくわかんないし…」

 未だかつてここまで落ち込んだ霧島を私は見たことがない。

 一方の鈴谷だが、意外とうまくやっているようだ。

「ちょっとおばあちゃん! ケツ以外なら叩いていいってわけじゃないからマジ叩かないで…つーか鈴谷ちょっとおばあちゃんに聞きたいことが…ちょっと待ってこのお漬物美味しい!」

 鈴谷はケツへの攻撃に悲鳴を上げながらも、おばあちゃんからお漬物を食べさせてもらってご満悦なようだ。こういうところは霧島と違って、したたかで溶けこむのも早い。

「さすが女子校生…恐るべきコミュ力ですね…」
「伊達に人生を舐めてないネ…ワタシ達と全然違うヨー……」

 この時、霧島が何か言いたそうな顔をしていた。

「……お姉様、私はパソコンでちょっとこの辺の宿泊施設を調べてみますね」

 恐らく霧島が言いたかったことはこれではなかったはずだが、そう言い終わると霧島は自分の荷物の中からノートパソコンを取り出し、近くの長椅子に座ってノートパソコンの電源を入れた。隣にはスーツ姿のサラリーマンが座っていた。

「えーと…wi-fiは…ハッ!! まさかwi-fiが飛んでない…ッ?!」

 どうもここに到着してから霧島は精彩を欠いている気がするが、事前に対策を練った計算高い立ち回りを得意とする霧島にとって、この地は予測不能なアクシデントに囲まれ過ぎているようだ。私にしてみれば、ここまでかわいくうろたえる霧島を見るのは珍しくて楽しいのだが、霧島本人はおそらく今、とてつもないパニックに陥っているはずだ。

「バカなッ…提督の故郷がまさかここまでの田舎だとはッ…?!」

 心の中で『それを口に出してはいけない』とたしなめたくなった。霧島があまりににぎやかなた
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