第36話 NOVA form 1
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……」
口調も変わり始めた鬼の幼女は、カズトの耳元で囁いた。
「パンドラを殲滅しろ」
その言葉とともに、カズトの中にナニカが入り込んでくる。暗く黒く醜い怨念の様な闇の色がまとわりつき、暗闇へと引きずり込んでいく。
そこにあるのは、痛みと怒りと憎しみと悲しみ。
強大すぎる闇の波に飲み込まれようとした、その時、金色の輝きがその闇の世界を照らした。光に手を伸ばし、闇を払おうともがき苦しむ。
意識が途切れそうになり、手を降ろそうとした時、
「カズト??」
自分の名前を呼ぶその声で、カズトは意識を現実へと引き戻された。
目を開ければ、そこはいつもの屋上。そして傍には心配しきった顔のサテラがいる。いつの間にか眠ってしまい、そこをあの鬼…もとい幼女につけこまれたようだ。
「大丈夫?真っ青な顔して………」
「あ、ああ……大丈夫です……少し、変な夢見てただけですから……」
ズキンズキンと響く頭痛を押し込める様に無理やり笑いながら、サテラの手を借りて立ち上がる。
そのつくり笑いを見破ったのかどうかは分からないが、サテラが心配そうな目でカズトを見つめている。
「どうか…しましたか?」
「え、あ、いえ、その……カズトこそ、何かあったんじゃないの?」
「………サテラさんは、何でも分かるんですね」
「な、何でもは分からないわよ…その…カズトのことなら…何となく」
頬を赤らめて言うサテラに、カズトは少し和まされた。恥ずかしいのだったら言わなければ良いのに。
良いカッコしいなのか、何なのか?
何にしても、可愛らしい人だ。
「でも、平気ですよ。自分に何の問題もありません。通常運転です」
明らかに作り笑いだと分かっていた。それでも、サテラにはそれ以上問いただすことが出来なかった。
「そう…分かった…」
けれど、諦めたわけではない。いつか、カズトが話したいと思った時にそばにいるのが、自分であればいいと思っている。
「で、先輩は一体どうしてここに?」
「え?あ、その、カズトの友達って子に聞いて…それで………」
今更この前のことを謝りたいと言うのも格好がつかず、何と言い訳しようかと目線を右に左にと逸らす。
カズトがそんなサテラを不思議に思っていた時、学園中に警報が鳴り響いた。
それは、戦争の始まりを知らせる警報。
そして、カズトの因縁が幕を上げる知らせでもあった。
頭の中の奥の奥で、鬼の面を頭につけた童女がニヤリと笑う。
「さぁ、開幕ダァ……」
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