第36話 NOVA form 1
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「ねぇ、カズト。この前はごめんなさい……そうよ、こんな風に普通に言えばいいのよ。何も変なことなんて無いわ」
サテライザーは自室の鏡に向かっていた。
先日、カズトに対して言いすぎてしまったことを本人に謝るためだ。
言いすぎたのはカズトを心配してのことだったのだが、それがしっかり伝わっていないかもしれない。
サテライザーにとっては、それが怖い。
初めはカズトなど、いてもいなくてもよかった。勝手に自分の問題に関わってきて、高い実力を持ったお人好しな青年。
それが段々と愛おしくなっていった。男など触るだけで吐き気や不快感を催すのに、カズトの時はそんなものを感じなかった。
「本当に……どうしたんだろ…」
自分でも分からない感情を抱えながら、サテライザーはカズトのいる教室へと向かっていった。
その頃カズトは、教室にはいなかった。
場所は屋上。そこのど真ん中でボンヤリと本を読んでいた。それはキャシーから借りた海外作家の小説。しかも英語だ。イジメなのかと思うくらい読むのが難しい。
「なのに読めるのはどうしてかねぇ」
パラパラとページをめくり読み進めていく。あまり本を読まないカズトでも、キャシーのチョイスがいいのか、もともとこの本が素晴らしいのか、ぐいぐい引き込まれていった。
その時だ。ザワりと頭の奥底で何かが呻いた。頭の奥の奥の奥。何度か感じた事がある気持ちの悪い笑い声。
「またお前か、小鬼」
「ああ。久しぶりだな、相棒」
再びあの黒い部屋に呼び出される。だが、そこにいる小鬼の様子はどこか違っていた。寂しげなピアノの椅子に座り、ニヤニヤと君の悪い笑みを浮かべながらこちらを見ている小鬼の笑顔が、いつもより引きつっているように見える。声だっていつもより高く、身長も若干伸びて幼稚園児程度のものとなつている。
「今度は何の用だ?最近はあんまり事件とかも起きてなかったはずだ」
「ああ。退屈な日々を無益に過ごしただけだったなぁ。つまらん男だよお前」
ケッ、と舌打ちをしながら、いちいち感に触る言い方の小鬼は随分と虫の居所が悪いらしい。
「だが、お前は出会ってしまった。あの女と同じ聖痕を持つ人間に」
小鬼がこちらに近づいたくるたびに、その顔にパキパキとヒビが入っていった。
「同じものに惹かれ、その存在を求め合い、やがて許さなくなる」
近づいてくるにつれて、その輪郭がハッキリと分かり、足元近くまである長い髪がダラリと垂れる。
「そして、やがてお前はパンドラを、喰らう存在となる」
鬼の仮面が床に落ち、中から覗いた紅い瞳を持つその顔は、怪しい魅力を放つ幼女のものだった。
どこかで見たことがある、幼いその整った顔はドンドンカズトを引き込んでいく。
「だから私はこう言うんだ
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