第3章 黄昏のノクターン 2022/12
29話 陰に在る者達
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、女性陣は後ろの応接用の大人数掛け用のソファに腰掛ける。かなりグレードの高い家具アイテムなのか、この層におけるベッドほどはあろうかというクッション性を見せる座り心地に戦慄しながら、改めて向き直る。
「さて、紹介状を持ってくるくらいだ。どんな用向きか、聞かせて貰いたい」
「水運ギルドの動向について教えて欲しい。彼等が木材を独占する理由、船を持つ者に対しての挑発行為、彼等には不審な点が多いように思える」
「………そうか、是非とも手を貸したいところだが、生憎と話を聞く限りでは、互いに持てる情報は似たり寄ったりと言ったところか。我々も彼等については同様の疑問を抱き、調査を進めている段階に過ぎない」
言われるままに要件を伝えると、僅かな逡巡を挟んで心許ない答えが返ってくる。しかし、男の臆面もなく堂々としている様は、どこか《含み》を感じさせる何かがある。
「………だが、どうだろう。水運ギルドの一件を解決するにあたり、君達の力を借りることは叶わないだろうか? ………無論、我々も協力は惜しまないつもりだ」
「………随分と急な申し出だな」
「好機は逃すに易く、得るに難いというものさ。………例え、初対面の他人とはいえ我々と方向性は一致せずとも、近似であることには変わりはない。メリットを得るのに、双方の間柄ほど些末なものはない。互いに悔いのない選択をしようじゃないか」
そして、こちらの思考の暇さえ与えないで男が語り出し、協力の要請を持ち掛けてくる。
何も情報が得られないうちに男の口から出た何らかの方向性を匂わせる《解決》の二文字は如何なる意味か、この雰囲気それ自体が彼等に根源的な不信感を抱かせているのも事実だが、男の頭上に出現した《?》のクエストアイコンと、目の前に開いたクエスト受領を確認するウインドウは、彼等に人間を教唆する術はないことを何よりも雄弁に伝える。彼等に意思と呼べるものはなく、あくまで与えられたシナリオ通りに役を演じる俳優として。いやむしろ、いっそ小道具としてだろうか。クエスト名にある《清算》の二文字が不穏な香りを立ち込めさせるが、これもきっと思い過ごしだと思いたい。
突然出現した、男の頭上にあるクエストアイコンをもう一度見遣り、受領ボタンを押下する。頭上にはカラーカーソルのみだった筈の通常NPCが突然、こうしてクエストを依頼してくるということは、何かしらのトリガーによる隠しクエストであることが窺える。
………ともあれ、クエスト受領を確認した男は一つ頷き、側近に何かを伝えて更に奥の部屋へ送り出すと、再び話し出す。
「………協力を承諾して頂けること、感謝する。私は《コルネリオ》という。この………まあ、なんだ。この自治組織を取りまとめている者だ」
自治組織という単語に行き着くまでに
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