第3章 黄昏のノクターン 2022/12
29話 陰に在る者達
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区往還階段の終点と比べれば小さなものだが、その堂々とした構えは立派なものだ。
………しかし、その扉の左右に立つNPC――――もとい黒づくめの偉丈夫はどう見ても一般の方には見えないのである。目に見えた武装こそしてはいないものの、体術スキルはカンストしていると言われれば信用してしまえるくらいに屈強な肉体であることが服越しにも判然としている。
「………リン、こんなときこそ男を見せてくれ」
「随分と雑なフリだな。まあ、行かなきゃ始まらないか」
「私も行ってくるねー」
「では、私も」
流石の女マフィアでさえ怯えてしまう威圧感の中、ヒヨリとティルネルを伴った俺は男達に歩み寄る。
「………止まれ」
「中に入るならば、何か身分を示せるものを見せてみろ」
「これでいいか?」
詰め寄る男達にロモロから渡された手紙を見せると、すぐさま筆記体に視線を這わせ、精査すること一分。周囲の黒づくめに何やら指示を飛ばす、一際と逞しい体躯の男は俺に視線を幽かに向けつつも、何とか納得してくれた様子で手紙を返される。
「………紹介状は本物のようですね。失礼致しました。………おい、御客人だ。執務室まで案内して差し上げろ」
もう一方の門番らしき男が重々しい柵と二枚扉を開くなか、後ろで固まっている女性陣にもこちらに来るよう呼びかける。戦々恐々としながら、重い足取りで門の前まで来たクーネ達には確認は一切ないらしい。
PT全員が窓口確認を済まされたと見做されたらしく、全員が白い塀の内側に通され、かなりの規模を誇る豪邸の敷居を跨いでは廊下を数回曲がる。やがて案内役の男が立ち止まった扉は、他の部屋の扉と比べて頑丈そうな造りに見えた。
「さあ、こちらです」
一礼され、持ち場へ戻る案内役を見送るのもそこそこに扉をノックする。借りてきた猫の如く委縮する女性プレイヤー達のことはさほど気に掛けず、中からの返答を待つこと一秒弱。
「………どうぞ」
「失礼する」
返事を受けたことを確認し、ドアを開けて室内に進入。
外壁と同じ純白の内装と深い色合いの床の木目のコントラストを誇る執務室は、調度品に彩られて高貴な雰囲気が漂うが、やはり無骨な男達が二人立っていることで物々しさも感じさせる。
その男を左右に配する位置、執務机に掛けているベスト姿の男だけは波風の立たない水面のような無表情でこちらを観察し続ける。野獣のような男に囲まれた彼の無機質さは、いっそのことこの部屋の誰よりも冷酷な印象を受けるものの、彼の頭上のカーソルはNPCを示すカラーリングだ。少なくとも、敵ではない。
「若い者に聞いた。ソファにでも掛けて楽にするといい」
言われ、俺は男を正面に据える位置に
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