第3章 黄昏のノクターン 2022/12
29話 陰に在る者達
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クーネが単刀直入に質問を投げかける。
「ロモロさん、水運ギルドが商品を梱包する木箱を有料にした件、何か思い当たる事はありませんか?」
「………あやつら、今度は商人を狙いおるか」
「何かご存じなんですか!?」
「ああ、聞かせてやるとも」
酒瓶を一口呷って机に置き、ロッキングチェアを揺らしながらロモロは話す。
「水運ギルドが船材を無暗に抱え込むようになってから、やつらは急に羽振りが良くなったのじゃ。街の木こりという木こりを皆雇い入れて、材は他の職人の手に渡さないほどの徹底した独占ぶりじゃった。おかげでワシらは見事に廃業させられたが、商人どもの荷卸しだけは木箱を融通して運んどったんじゃ」
「………つまり、商人には木箱を回す意思はあった。という事か?」
俺の問いに、ロモロは静かに頷く。
「商人はワシらとは違って、商売敵ではないからの………じゃが、こうしてその木箱でも金を取ろうとしとるのは、ワシには商人から金を巻き上げようというよりも、もっと別の目的があるような気さえするわい」
「他に思い当たることは何かないのか?」
話し終え、喉を潤すようにというよりは何かを流し込むように酒を一息に飲み干した老人は、ついぞ俺の質問には口頭で答えず、代わりにテーブルにあった適当な紙に何かを書き込んでは半分に折って突き出してくる。
「………この件については、ワシよりも、ここを訪ねた方がええ」
「………マップデータ、それにここは………?」
手渡された紙は筆記体の流れるような文字が記されているものの、生憎と英単語ではなさそうなスペリングが目立つ。しかし、手書きの粗雑な地図をタップすると現れるマップデータは、北西の観光エリアの片隅を指し示していた。
「行ってみりゃあええ。滅多なことをしなければ殺されはせんじゃろうが、一応はこのロービアを守っとるヤツらじゃ。コイツを見せて話をすりゃあ、あとは力になってくれるはずじゃて」
何やら物騒な発言が聞こえたが、これで《船匠の願い》は終了。
今度の目的地はこのマップデータの示す地点となるのだが、念のためにポーション類を確認してから目的地へ。道中で立ち寄った道具屋のお姉さんも頭を抱えていたが、瓶詰の商品が多いことから有料木箱を使わなくてはならないことを明かしてくれた。同時に、ポーション類を取り扱う店は同じような品卸しをせざるを得ないだろうとも。つまり、ポーションの値上がりは近日中に確実に起こることになる。確実に、価格高騰か劣化商品の足音は近づいているようだ。
そして、何とか目的地に到着したのだが、予想の斜め上を行く光景に唖然としてしまう。
先ず、目の前には高く白い塀と鉄格子のように強固な柵、そこに収まる大きな二枚扉。迷宮
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