第3章 黄昏のノクターン 2022/12
29話 陰に在る者達
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「このまま木箱に防具を詰めないで納品されても布以外は全滅だろうな………大人しく木箱に詰めて貰うか、それとも水晒しで運んでもらうか………冒険者のあんたに言うのも気が重いけれど、こればかりは許してくれ………」
辛そうに胃の辺りをさすりながら、店主は青い顔で再び算盤に向き合う。
………しかし、この様子だと本当に値上がりも在り得るということか。さもなくば、もれなく水濡れエフェクト付きの劣化装備を掴まされるか。何れにせよこの二択だろう。プレイヤーとしては断固阻止せねばならない事態だ。
一先ず、このまま胃潰瘍になられて休業されても困るので防具屋からは情報収集を切り上げ、外に出ることにする。次は順当に武器屋か、それとも別の店を覗いてみるべきか。決めあぐねていると、涼やかなサウンドエフェクトが響き、クエストログの進行が知らされる。
「………なんだろう?」
不思議そうに傾げるヒヨリを余所に、俺はクエストログを開き内容を確認する。
そのウインドウに記された内容に眉根を潜めつつ、内容を目に焼き付けんばかりに睨み付ける。
【ロービアで借りた宿で一夜を過ごし、商人や露店の店主が困り果てていることに気付いた。もう一度船匠に会え】
「燐ちゃん、これって………?」
「ロモロさんの事、ですよね?」
ヒヨリと、隣からウインドウを覗き込んでいたティルネルの両名の疑問符に首肯する。しかし、まだこのクエストに息の根があったのかとうんざりする反面、《ロービアで借りた宿で一夜を過ごす》という条件は、俺が狙っていた隠しクエストの発生条件を想起させる。未だ隠しクエストの存在は確認できていないが、この主街区にいるプレイヤー全員に影響を及ぼすであろうこの案件は無視できないものがある。
「リンくーん、このクエストログって何なのー!?」
となれば、隠しクエストは一旦保留か。と結論に至る前に、クーネの大声にカットインされる。
昨日の時点ではPTから離脱していなかったので、俺達が防具屋から事情聴取をしたことによるクエスト進行のトリガーを共有したのだろう。ともあれ、簡単に状況を説明した上で彼女達にも同行を依頼。熊狩りPTは継続して維持され、再びロモロ邸へと赴くこととなった。
………そして、通り過ぎる水運ギルドから罵声を受けること幾度か知れず。ようやく辿り着いた船匠の家は昨日と相も変わらず、ロモロはロッキングチェアに腰掛けて酒瓶を呷っていた。
「おじいちゃん、おはよう!」
「………フン、今度は何の用じゃ?」
開口一番朝の挨拶から入るヒヨリに、初対面の時に比べて当たりの強さが柔らかくなったロモロは、それでもぶっきらぼうな台詞で出迎える。
しかし、世間話をする暇もなく、
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