第ニ話。消えない伝説
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ンポイントに語れば消えるような物語がないのです。一番オーソドックスな対抗神話は『百物語』をしても何も起きない……というものなのですが、兄さんの百物語は『101番目』ですしね。今まで類似した話が存在しません。
『不可能を可能にする男』に至っては……どんな物語にも『干渉』するという特性上、対抗神話に干渉される恐れすらありますから……下手に夜話を語ればその夜話を改変されてしまう、そんなことが出来る存在ですので。そもそも『不可能を可能にする男』の対抗神話も『何も変わらない』というものしかありませんし」
「そう、なのか」
理亜の言葉に驚愕するのと同時に安堵してしまう。
『千夜一夜』も完璧ではない、ということか。
それが解っただけでも充分だ。
「さあ、兄さん。これで解ったでしょう?」
理亜は最後通告をしてきた。
「ああ……痛いほど。苦しいほどによく解ったよ……」
弱ってたとはいえ、一之江や音央が同時に仕掛けたというのに、理亜には何も出来なかった。
一之江が、音央、鳴央ちゃんが苦しんだ時に、俺は何も出来なかった。
『俺』の物語は消せないという抜け道があるということは、俺一人でなら『理亜と戦える』という選択肢もあるのだが、俺はそんな選択肢は選べない。
可愛い妹同然の少女。
それも俺を慕ってくれる子を『攻撃』なんてこっちの俺には出来ないのだから。
例え、唯一理亜の『千の夜話』に対抗出来る存在だとしても。
それに俺が理亜に『攻撃』した場合。
理亜は俺よりも先に一之江達を完全に消そうとするだろう。
______つまり、誰かを犠牲にすることになるのだ。
それだけは嫌だし、そんな選択は俺には出来ない。
と、いうことは、だ。
俺が今とるべき正しい選択肢は。
一之江や鳴央ちゃんを殺すつもりはないと言った理亜の言葉を信じること。
音央のことも消すつもりはないとも言っていたのだから。
だから______正しい選択肢は、俺がこのまま理亜の物語になること。
それが正しい選択肢ということが解る。
「兄さん。もう兄さんは充分頑張りました」
ああ、そうだよ。
頑張ったさ。
『さあ、元の生活に戻りましょう』
理亜は優しく語りかけてきた。
ついさっきまでの、冷たくて怖かった口調からいつもの柔らかくて優しい声で語りかけてきた。
その柔らかさだけで涙が出そうになってしまう。
元の生活……一之江や音央、鳴央ちゃんやキリカと過ごす普通の生活。
普通に学校に通って普通の高校生として過ごす。
普遍的な生活。
ああ、そうだな。
そうすれば、もうみんなは傷つかなくて済むし、怖い目に遭わなくて済むようになる。
今までの日常がおかしかったんだ。
都市伝説のオバケと戦うような
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