第ニ話。消えない伝説
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為に『主人公』になりましたので」
その言葉は俺にとって衝撃的だった。理亜は自ら、その物語の『主人公』の道を選んだのだという。
俺みたいに偶然なってしまったのではなく。『ロア』を消す為に。自らの意思で。
「ですから、貴女から『神隠し』だけを消し去り、普通の少女に戻すことも出来ますよ。
______本物の、六実音央さん」
理亜が鳴央ちゃんにそう告げる。
そうか。やっぱり知ってるのか。
音央の正体も______鳴央ちゃんが犯した罪も。全部……。
「り、理亜ちゃんっ」
理亜と面識がある音央が声を荒げる。
怒ったような声だが、そこには戸惑いや動揺があきらかに含まれていた。
「音央さん。貴女の場合、その対抗神話を口にすると消えてしまうのがご理解いただけたと思います。ただ、私は貴女のことは気に入ってますし、お友達が貴女のファンなので______兄さんが私と敵対する、という展開にでもならない限り、消したりすることはありません。ご安心下さい」
「うぐっ」
音央は何かを言おうとしたが、言葉を飲み込み、そのまま手を握り締めた。
その光景はまさに。
______圧倒的。圧倒的な『君臨』だった。
この場だけではない。ロアの事を知り尽くし、その物語を熟知し、そして対抗神話を語ることでその力を消し去る事が出来る。そんな能力を有している。
ロアという存在はさっき理亜が言ったように曖昧で儚く、脆い。
それは人々に噂されることで発生してしまい、語られる噂に影響される存在だからだ。
不本意なまま、ハーフロアになってしまった俺みたいな人や人々に噂された事により実体化し、発生してしまった都市伝説『ロア』。
元は人間だったハーフロアはともかく……。
噂によって生まれた純粋なロアは生まれた瞬間から決められた物語の通りに行動する。
無害な都市伝説もあれば、殺害系や神隠しなど、人々に直接危害を加える物語もある。
それが成長すれば多くの人々を害する可能性がある。
そんな人やロアがいる中で、そんな全てを『なんとか出来る』力。
それを自分から望んで手に入れた主人公。
それが『終わらない千夜一夜』、理亜なんだ。
その考え方や行動力は見事すぎるほどの『主人公』だ。
「理亜……」
俺は背中に乗っている一之江をそっと抱え直しつつ理亜を見上げる。
そして理亜に語りかけようと口を開いたが。
「ただ、私の力では兄さんの『百物語』と『不可能を可能にする男』の物語を消し去るのは不可能なので、私の物語にするしかありません。大丈夫です。もう戦わせたり、苦しい思いをさせたりはしませんから」
「俺のは消せないのか?」
「はい。兄さんのロア『百物語の主人公』は特殊なので、ピ
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