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101番目の舶ィ語
第一章。千夜一夜物語
第一話。『対抗神話』
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責任でもない。
誰も予想できなかった。
一つの現実だ。

______俺の大事な物語たちと、大事な妹が戦いを始めてしまった。

もし責任があるのなら。
その責任は俺にある。
俺は一之江と出会った頃から、その可能性に目を瞑ってきた。
理亜が何かしらの『ロア』であるという可能性から。
もっと早く、理亜を調べていれば。
もっと早く対策を練っていれば。
少なくとも、俺の物語たちを巻き込むことにはならなかったはずだ。
『もし』、『たら』、『れば』なんて言い出したらキリがないが。
だが、それでも。
それでも思わずにはいられない。

「甘いわよー!」

一之江と音央の攻撃が届く前に、理亜の体は赤いマントによって消失する。
その隣にいたスナオやかなめの姿もどこにもいない。
スナオ・ミレニアムのもつ『ロア』は『赤マント』。
そう、彼女の能力は『少女を浚う』というもの。
どんな状況下であっても、その赤いマントは理亜やかなめといった『少女』を浚えるのだ。
と、そんなことを考えていると。

「くっ!」

一之江の悔しそうな声が聞こえ。
彼女の方を(姿を見ないように気をつけつつ)見ると。
一之江は今まで理亜達が立っていた(フェンス)の上に着地していた。辺りを見回している様子から理亜達の姿を見失ったようだ。
一之江の目はすっかり戦士の目で、対象を倒す以外のことを考えていない。
そんな目をしていた。

「ど、どこに消えたの?」

「気をつけて下さいっ!」

音央が放った茨の蔦も空を切り。
焦った顔をした音央と、青ざめた顔をしている鳴央ちゃんが叫んだ。
その時だった。
すっかり動揺していた俺達の耳に、理亜の静かな声が響いた。



『メリーさんの人形に襲われた人物は、その最期の瞬間に呟きました』




「つ??」

その声を聞いた瞬間。
一之江の体がビクッと跳ねた。
どこからともなく響くその声が、まるで物語を朗読するかのように。
淡々と、そして綺麗なトーンで響き渡る。





『そう。もしもこの人形が探しているのが、私ではなくて『メリーさん』なのだとしたら。
復讐の相手はメリーさん自身なのだとしたら。彼女はそう考えて______』




「あああああっ??」

理亜のその静かな声を聞いた途端。
一之江が、今まで聞いたこともないような大声を上げ、両手で体を抱きしめるようにして苦しみだした。

「一之江??」

その目は大きく見開かれ、顔面は蒼白になっている。

まさか、これがさっき理亜の言っていた『夜話(やわ)』なのか??



『だから復讐にやってきた人形にこう語ったのです。「もしもし、私は______」』




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