Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 20. The Advance of Black Cat (3)
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
その目に戦意は無く、怖気づいたかのように一歩一歩と下がっていく。
それを見た一護さんは、再びちいさくため息を吐くと、スッと立ち上がって周囲を見渡した。鋭い眼光にがぐるりと旋回し、その視線の先にいた者は皆すべからくすくみ上った。
「……どうした、来ねえのか? 俺を殺せって、親玉から言われてんじゃねえか。俺はまだケガ一つしちゃいねえぞ。それとも、へっぴり腰で後ずさりするってのが、オメーらの『狩りの美学』だって言いてえのか」
一護さんの挑発にも、誰も乗ってこない。むしろ、その挑発内容通りに、後ずさりし始める奴まで出てきた。連中は皆、一護さんの圧倒的な戦闘能力に怯えきっているみたいだった。
それどころか、
「お、おい、アイツの恰好……」
「ああ……オレンジの髪に、ブラウンの目。そんでボロボロの粗末な刀……」
「……『死神代行』。こいつ、死神代行・黒崎一護だ……!」
ようやく一護さんの正体に気づいたみたいだった。
怯えが三割増しした連中を尻目に、しかし一護さんはさして気にした様子も見せなかった。
「……まあ、何でもいーや。そのまま固まっててくれたほうが、何かとやりやすいし。なあ? リーナ」
「うん、やりやすかった」
いつの間にか、一護さんの傍らに白い人影が立っていた。薄手のケープを纏い、手には短剣。月光を浴びて輝く純白の髪は、雪のように美しかった。
「リーナ、さん……」
「なに? 集団家出の言い訳なんて、聞きたくないんだけど」
いつも通り、澄んだ声で辛辣な言葉が返ってきた。それもちょっと嬉しいかな、なんて言ってしまうと、ダッカーの仲間入りになってしまうから、決して言わないけど。
「んで? 仕事は終わったかよ」
「ん」
ごく短く肯定したリーナさんに促されて、僕は辺りを見渡す。
そこには、いつの間にか麻痺毒を食らって倒れ込む賊連中の姿。どうやら麻痺毒のエンチャント付きの短剣で全員を闇討ちして回っていたらしい。全く気づけなかった辺り、相当な速さで完遂したんだろう。さらに、視界の端、僕らの仲間を示す三本のHPゲージは全て満タン。麻痺による捕獲に先んじて、黒猫団のメンバーの回復まで済ませてくれたみたいだった。
棍を杖のようにして立ち上がると、両脇からササマルとテツオが支えてくれた。手に持った棍は、ダッカーが受け取ってくれた。皆と疲れた笑みを交わし、無事を確認する。
「くそっ、くそがぁっ……だ、だがなあ、どうせ麻痺なんざ時間が経ちゃ消えるんだ。麻痺が解けちまえば、犯罪者を殺せねえチキンなてめえらに、俺らの逃走は止められね――」
「いいこと教えてやるよ」
もう先ほどまでの余裕の欠片も見えないマルカスの台詞を再び遮り、一護さんの声が響いた。
「当初の予定じ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ