Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 20. The Advance of Black Cat (3)
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見せて「今までゴメン。これからは、僕らが護ってみせる」と、そう言いたかった。
「ふう、ずいぶん抵抗してくれたけど、これで終わりかな。中々楽しい狩りだったよ。黒猫君たち」
一センチだって上がらない頭の上で、マルカスの声が響く。この男の声が、人生最後に聞く人の声だと思うとイラッとくるな。せめて、仲間の声を聴きながら逝きたかった。
ささやかなワガママを心の中で吐きながら、今にも振り下ろされるであろう刃を受け入れようと、僕が目を閉じようとした、その瞬間だった。
突如背後から飛来した白い閃光がバンディットに衝突し、そのまま彼方へと吹き飛ばした。同時に黒い疾風が僕の前に立ちふさがり、マルカスの曲刀を受け止める。激しい衝撃音が鳴り響いたが、その大きな背中が揺らぐことは微塵も無かった。
「んんー? 全く、誰だい? 他人の狩りをジャマするなんて、無礼にも程があるよ?」
やや不快な色の覗く声でマルカスが問う。
対して、黒衣の人は至極落ち着いた様子で、
「答えるまでもねエだろ。テメエらの、敵だよ」
「……成る程ね」
色の無い声でマルカスが応じる。
「……こっちも、一つ訊きてえ」
「なにかな」
「コイツの右腕をやったのは、テメエか」
そう問われると、マルカスは低い笑い声を漏らした。
「ああ、そうだよ。狩りにおいて、獲物の四肢を潰していくのは基本だからね。奇をてらわず、理にかなった仕留め方をするのが狩りの美学ってもの――」
「そうかよ」
マルカスの演説を遮るように、黒衣の人が言葉を挟む。同時に響く、軋むような金属音。どうやら曲刀を押し上げたらしい。マルカスの微かに唸る声が聞こえる。
「ンじゃあ、その『狩りの美学』ってのに則って……」
今まで静かだった黒衣の人の語尾が、微かに荒ぶる。まるで今までの冷静さが嵐の前触れだったとでもいうかのように、炸裂する寸前のエネルギーを含んだ声。
その声の残響が消えるより前に、
「もらうぜ、テメエの右腕!!」
銀色の閃光が走り、一拍おいて、マルカスの右腕が曲刀を握ったまま斬り落とされた。
一体何が起きたのかマルカスが把握する前に、黒衣の人の廻し蹴りが脇腹に叩き込まれ、隻腕となった犯罪者の頭領は突然の乱入者に驚いていた部下たちの元へとすっ飛んで行った。
砂塵と驚愕の声とを背景に、その蹴りを放った流れのまま、黒衣の人がこちらに振り返り、僕を見下ろした。
暗くて細部まではよく見えない。ただ、持っているのが粗末な作りの刀であること、それから髪の色が派手なオレンジ色であることだけは夜の闇の中でも十分に分かった。
「――よお」
一護さんが、そこにいた。
僕は、咄嗟に何かを言おうとした。
危険な
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