Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 19. The Advance of Black Cat (2)
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リーナさんに無理やりモンスターの大軍に突っ込まされたり、一護さんとタイマンで模擬戦闘してノーダメージなのに死にかけたりしたことを思い出せば、この状況は絶望的じゃない。あの逃れられない地獄と違って、今ならまだここから命の危険に晒すことなく逃走できる術はあるはずだ。そう思い、僕は最大限の勇気を奮絞って一歩前に出た。恐怖で震える唇から長く息を吸い、吐いてから、なるべく真面目な声を心がけて話しかける。
「こ、こちらこそ、初めまして。僕らは『月夜の黒猫団』です。り、リーダーを務めてる、ケイタっていいます」
「おお! これはこれは素晴らしい。催促せずとも名乗ってくれたのはキミが初めてだ。紳士的な対応に感謝するよ、ケイタ君」
「あ、ありがとう、ございます」
素直に驚いた、とでもいうかのような反応を見せたマルカスに、僕はぎこちなく礼を返す。周囲の賊たちも、へぇ、とか、マジか、とか、感心するような声をもらすのが聞こえる。十中八苦、それには嘲りの意味が籠っているんだろうが、そんなことはどうでもいい。今、この場を切り抜けることだけを考えるんだ。
「そ、それで、マルカスさんは、僕らに、ど、どのような御用があるのか、伺ってもよろしい、でしょうか」
「うんうん、話が早くてとても助かるね。それでは御言葉に甘えて。
ボクらは所謂『人狩り』を生業にしていてね。キミたちのような一般プレイヤーから金品を頂戴することで生計を立てている。巷じゃあ犯罪者ギルド、なんてナンセンスな名称でひとくくりにさせているが、ボクらはそんな下賤な集団じゃあない」
アルカイックスマイルを崩さないまま、マルカスは木陰から進み出ると僕の前に立ち、優しい教師のような声色で語りかけてきた。
「ボクらは皆狩人なんだよ、ケイタ君。大自然と一体になり、獲物の動きを読み、知恵を駆使して罠を仕掛け、そして狙った方法で確実に狩る。そこらの食い詰め人のように怠惰や傲慢の発露として襲っているのではない。人が人としてあるべき姿、すなわち、自然の節理を壊すことなく、自然と共に生きる。厳しくも逞しい弱肉強食の美学に生きるために、己を律して美しい狩りを行っているのだよ。分かるかい?」
「は、はい。とっても、よくわかります。その理に従ったために、あなたたちは僕らを狩り、僕らはあなたたちの罠にかかって狩られた。至極当然。す、全ては、強気者が勝つという、自然の導きとあなたたちが共にあった故の、当然の結果。そういうこと、ですか?」
「ブラボー!! まさかそこまで深く理解してくれるとは! 昨今の若者は自分の主張に凝り固まりすぎているとばかり思っていたが、これは考えを改めねばな」
感激しきり、といった様子のマルカスは、何度も何度も満足げに頷いている。それを見返す僕も、破綻だらけの理屈に破綻塗れ
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