Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 19. The Advance of Black Cat (2)
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はなく、ついさっき一人の人間の手を斬り捨てたとは思えないくらい、異様に静かな光を宿していた。
直感でわかる。こいつはヤバイ。多分、この四人でかかってもどうしようもないくらいに。
でも、それはこのまま戦闘に入った場合の話。馬鹿正直に相手をするつもりはないし、その必要もない。このまま一気に走って逃げるか、あるいは転移クリスタルで離脱するか。どちらかが成功すれば、それで十分だ。
加熱どころか過熱気味の脳内をどうにか抑え込みながら、全員に遁走命令を出そうと息を吸い込んだ瞬間、
「おーおー! クソ弱そうな連中だなオイ!! こりゃ絶好のカモったヤツじゃねーか、よお!」
「でもよ、コイツら金持ってなさそうじゃね? 狩ってもあんまし美味くねえだろ」
「それならそれよ。金がねえならフクロになってもらうだけさ。ヒャッヒャッ」
一人、二人、三人……まだまだ出てくる。闇夜から湧き出すようにして、武器を持ったプレイヤーが次々と、僕たちを取り囲むようにして姿を現した。どの顔にも見覚えはないが、全員の頭上に光るオレンジマーカーが、こいつらの正体と目的を十分すぎるくらいに教えてくれていた。
プレイヤー相手に強盗を働くプレイヤー集団、オレンジギルド。
「で、どうしますね、お頭」
「どうもこうもない。いつも通り、美しく行こうじゃないか」
山男の声に応えるようにして、暗がりから一人の男が現れた。他の連中と比べても一回り若く、しかし図体だけは二回りは勝っていようかという大きさに見えた。手にした曲刀がナイフに見えるくらいだ。その巨体をスラックスにワイシャツ、革のブーツに強引に押し込めている。その妙な身綺麗さと図体、服装の三要素が醸し出すミスマッチは、ここが圏外でなく相手がオレンジでなければ、ユーモラスで笑いを誘う出で立ちと評することが出来たかもしれない。
ミスマッチ男は山男の隣に立つと、僕たちに向かって穏やかな笑みを浮かべてきた。人の好さそうなごく普通の笑顔のはずなのに、僕にはそれが死神の嗤い顔に見えた。
「やあ、初めまして諸君。ボクらは『デスサイズス』という狩り集団だ。僭越ながら、頭領はこのボク、マルカスが務めている。以後お見知りおきを」
気障ったらしい動作で一礼するマルカスの台詞に、僕は戦慄した。
以前、情報ペーパーで見たことがある。標的を瀕死になるまでいたぶり、金品を強奪する大型犯罪者ギルド。その名前が『デスサイズス』だったはずだ。リーダーの名前も一致している。ということは、副官らしいあの山男がバンディットだろうか。
最悪だ。
よりによって、ここ最近で最も動きの派手な凶悪犯罪者集団に捕まるとは。
けど、その最悪な状況下においても、まだ僕はパニックになる半歩手前で踏みとどまることが出来ていた。
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