8.提督が怒った理由
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くなかったこと…すべてを隠すことなく説明した。
球磨は、提督の話を目を閉じてジッと聞いていた。時折私が淹れた紅茶を飲みながら、時に頷き、彼の話を遮ることなく、最後まで静かに聞いていた。あと、気のせいだとは思うが、時々球磨のアホ毛がぴょこぴょこ動いていた。
「なるほど。そりゃ確かに怒鳴られて当然クマ。キソーが悪いクマ」
「だろ? よかったー7回殺されなくて…」
「でも提督、さすがに大破状態のキソーを壁に叩きつけるのはやりすぎクマ」
「う…それは反省しています…」
「ならいいクマ。とりあえずキソーへのフォローはしとくから安心しろクマ」
「頼むよ。…つーか木曾は分かってくれるかなぁ?」
「キソーは見た目通りかわいくていい子だから、その辺は保証するクマ。でもその先はキソーと提督の問題だから、自分でなんとかしろクマ」
「了解した。ありがとなー球磨」
「そういうことはキソーと仲直りしたあとで言うクマ。あと上着は洗濯して返すクマ」
それだけ言うと、球磨は執務室から出て行った。球磨も私と同じく、球磨型軽巡たちの長女だ。パッと見はマイペースでとぼけた感じはするが、妹の面倒をよく見、冷静に周囲を見回して妹達を導き、妹が泣いているときは今のように全力で妹のために走り回る、妹思いな艦娘だ。
あの球磨に任せたのならもう大丈夫だろう。木曾にも彼の気持ちはきっと伝わる。そう思えた。そしてそれは、翌日の第二艦隊出撃の際に実感できた。旗艦は昨日と変わらず木曾。
「提督、これから第二艦隊、出撃する」
「ああ。傷はもういいのか?」
「大丈夫だ。心配かけてすまない。…なあ、提督?」
「ん?」
「……いや、改めてお前と約束したい。俺はお前に、最高の勝利をやる」
「…わかった。木曾、期待してるからな。最高の勝利をおれにくれ」
「ああ。本当の最高の勝利だからな。期待して待っていてくれ」
そう言って執務室を後にする木曾の顔は、晴れやかだった。
執務室の窓からは鎮守府の港がよく見える。彼はよく、出撃する艦隊の後ろ姿をここから見守っていた。今日も、元気よく出撃する木曾たち第二艦隊を見守っていた。
「テートク」
「ん?」
「良かったネ。木曾と仲直り出来テ」
「そうだな。球磨さまさまだくまー」
「プッ…球磨のマネですカ?」
「そ。似てない?」
「似てないデース」
気がつくと私たちは、お互いどちらからともなく、手を繋いでいた。
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