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彼に似た星空
8.提督が怒った理由
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』の汚名を着せられ、殺されかねないほどの憎悪を向けられた時、彼はそれを受け止めることが出来るのだろうか。

 そう思ったら、今私の目の前で自身の手の震えに苦戦し、苦笑いを浮かべる彼の姿が、美しい輝きを放つがひどく脆くて壊れやすい、ガラス細工の芸術品のように思えた。

「テートク! ちょっとティーカップを置くネ!」
「えー…だって今飲んでるよ〜?」
「いいから置くネ!!」
「は、はい!!」

 私にそう言われ、彼は慌ててティーカップを置いた。慌てて置いたため、紅茶が少し波打ち、ほんの少しだけ溢れて机にこぼれた。

 私は彼がティーカップから手を離したのを見て、両手で彼の震える右手を包み込んだ。

「お? 金剛?」
「テートクの手は大きくて温かいネ…この手でワタシたちを守ってくれてるんデスネ…」
「突然どうした?」

 彼の手は、女性のように美しい外見とは裏腹に、こうやって触れてみると意外と骨ばった、男らしい手をしていた。彼はこの手を恐怖で震わせながら、必死に私たちを守ってくれているのだ。そう思うと、彼の手はもちろん、この震えも愛おしいものに思えた。

「テートク、大丈夫デス。ワタシたちは絶対に轟沈しないヨ。テートクにそんな思いはさせないネ」
「……」
「ワタシたちはテートクがいる限り、必ず鎮守府に戻りマス。だからテートクも、安心して指揮を取って下サイ。ダイジョーブ! テートクにそんなつらい思いは、ワタシが絶対にさせないネ!!」
「そっか…ありがとう金剛」

 彼はそう言って、私を見た。私も彼の目を見た。今気付いた。彼の瞳は少しブラウンがかっていて、とても美しかった。見つめていると吸い込まれていきそうだけど、時間が許す限りずっと見ていたい、もっと近くで見てみたい…そう思えるほどキレイな目をしていた。私と彼は、こうやってしばらくの間見つめ合った。

「キソーを泣かせたバカ提督はどこにいるクマぁあア?!!!」

 不意に怒り心頭の球磨が、執務室にノックもせずに入ってきた。私と提督はとっさに体勢を整え、ドアの方を向いた。

「ど、どうしたんだ球磨ァアあ?!!」
「ど、どうしたんデース!!!!」
「お? なんか二人共えらく慌ててるクマ」
「そ、そんなことはない!!(デース!!)」
「?  まぁいいクマ。うちのかわいいキソーが泣いてたクマ。何をやったのか正直に吐けクマ」
「うー…マジか〜…」
「事と次第によっては、球磨は提督を確実に7回葬るから、覚悟しろクマ」
「おれをどんだけオーバーキルするつもりだよ?!!」

 その後、彼は球磨に事の経緯を詳しく説明した。命令に背いたこと、それを厳しく叱責したこと、自分の非を認めない木曾を投げ飛ばしたこと…万が一のことがあったとき、木曾に自責の念を持って欲し
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