8.提督が怒った理由
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は分かる。要は彼は、重責を私達に背負わせたくないのだ。彼は自分がすべてをコントロールすることで、万が一のことが起きた際に、私達のメンタルに逃げ道を準備してくれているのだ。私達が“自分のせいだ”と自責の念に囚われて苦しむ事のないように、自分が全責任を負っているのだ。
「…んじゃテートクはどうなるんデス?」
「ん? 何が?」
「ワタシ達はテートクがエスケープになってくれてるケド、テートクは逃げ道がないネー」
「まぁ〜…それがおれの商売だからね」
優しい人だ。私たちのためなら、自身が苦しむのも覚悟しているようだ。
しかし私は知っている。彼はそこまで強い人間ではない。万が一の事態が起こった時、平気でいられるほど強靭な精神を持ち合わせた強い人ではない。
「こんごー…」
秘書艦をしていて気付いたことがある。彼が私をこう呼ぶ時は、少し参っている時だ。元気な時の彼は、私のことを『金剛』と呼ぶが、少し疲れている時や参っている時は、ちょっと間延びした感じで私を『こんごー』と呼ぶ。
「ハイ。どうしまシタ?」
「金剛の紅茶が飲みたいな。淹れてくれる?」
「了解デース。ちょっと待ってるネー」
私は自分の席を立ち、彼のために紅茶を淹れた。彼の気持ちが少しでも安らぐよう、紅茶に少し砂糖を入れ、甘みを足した。
「ハイテートク。紅茶ダヨー」
「ありがとう。いい香りだ」
「テートクの気持ちがちょっとでも休まるように、いっぱいワタシのLoveを込めて淹れたネ!!」
「それは少々恥ずかしいが…気持ちはうれしい。ありがとう金剛」
私はそう言いながら提督に紅茶の入ったティーカップを渡した。提督はそれを受け取り、いつものように目を閉じて香りを楽しんだ後、ゆっくりと口に含み、紅茶を味わっている。彼は必死に隠そうとしているが、彼の手は震えていた。小刻みに震え、紅茶は波打っていた。
「oh…テートク…手が震えてるネー……」
「情けないだろ? あんなことしたあとだからかな…ちょっと手が震えちゃって…」
「テートク…大丈夫デスカ?」
「んーまぁ震えてるだけだから。つーか木曾の方が心配だ。やりすぎちゃったかなぁ…」
苦笑いしながらそう告白する提督を見て、この人は本当に優しい人なのだと関心した。きっと彼は、元々が争い事を好まない優しい性格なのだろう。恐らくは、本来なら部下に対して声を荒げて叱責することすら出来ないほどに。今だって、さっき叱責した木曾の心配をしている。
そんな人が、もし私たちが轟沈したときは自分がすべての責任をかぶり、仲間たちの恨みを買うとまで言っている。だが彼にそんな苦境が耐えられるのだろうか。こんなにも優しい人間である彼が、自分が艦娘を殺したという自責の念に襲われた時…艦娘たちから『仲間殺し
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