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彼に似た星空
8.提督が怒った理由
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信用してないわけないだろうが!! そんなヤツにあの作戦を任せるわけがないだろ!!」
「だったら何を怒ってんだよ……作戦は成功させたんだから……文句はないだろ!!」
「……お前、おれに最高の勝利をくれる約束をしたよな?」
「ああ、したさ。だから今回も、お前のために勝利をもぎ取ってきたんだよ…!」

 木曾が自身の折れたサーベルに手を伸ばした。ボロボロの鞘から抜かれたサーベルは折れて刃が欠けており、おそらく修理をしなければ刃物としては役に立たなくなってしまっている。その状態のサーベルを提督に向けた。精一杯の抵抗のつもりなのだろう。

 提督は襟を掴んでいた手を離した。その後木曾の体を支え、ボロボロになった第二艦隊の面々の方に向けた。

「なんだよ提督…」
「いいか。目をそらすなよ木曾。榛名は大破判定…不幸中の幸いでダメージの大半は艤装に集中していたが、あと一撃ダメージが入っていたら榛名は確実に轟沈だ」
「提督……榛名はだいじょ……」
「赤城は中破判定。開幕爆撃は可能だが砲雷撃戦時の支援は不可能だ」
「提督…私はまだ…」
「鳳翔も中破判定。だが艦載機はほとんど落とされているから先制攻撃の爆撃は不可能。おまけに直掩機も出せない。こんな調子で赤城だけに航空戦を任せていたら、確実に相手に制空権を握られて艦隊はさらに甚大な被害を被っていただろう」
「……」
「伊勢も中破判定だ。その上瑞雲はすべて撃墜されている。おまけにダメージのせいで火器管制に異常が発生している。砲撃を相手に直撃させるのも難しい状況だ」
「提督…」
「夕立は小破判定だが、火力が高いと言っても駆逐艦だ。夜戦では活躍できても、その前には全員が無傷で昼の戦闘をくぐり抜けなければならない」
「ぽい〜……」
「なにより木曾、お前だ。ダメージのせいで甲標的による先制攻撃は不可能。雷撃もその状態では難しいし、砲撃にも本来の正確さはないだろう。なにより深刻なダメージを受けて今こうやっておれから逃げられないほど動きにキレがない」

 提督は木曾の体を支え、第二艦隊の面子一人ひとりを見せた。全員が、木曾ほどではないにせよ、大なり小なり傷を負っていた。服は焼け焦げ、艤装は損壊し、矢は尽き、砲塔が折れ曲がっていた。

「第二艦隊は満身創痍だ。帰り道に襲撃されていたら、お前らは確実に全滅だ」
「確かにそうだな…」
「……これがお前が言う最高の勝利か! これが、お前がおれに約束してくれた最高の勝利なのか!」
「……」 

 提督が木曾から手を離した瞬間、木曾は崩れるようにその場にへたりこんだ。もう体力も限界だったのだろう。一番近い場所にいた赤城と夕立が木曾を支え、やっと立てる状態だった。

 一方の提督はそのまま木曾の方を見ることもなく、自身の席に戻った。帽子を深く被って
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