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乱世の確率事象改変
魔女の想い
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ビシリと胸が痛んだ。もやもやする。苛立たしい、腹立たしい。自分勝手も……大概にするべき。

――いや……これはアレだ。まだ私はあいつが、否、黒麒麟が劉備を信じていることが許せない……そういうこと。

 壊れる程に信じていたあの男は、信じて貰えなかったというのにまだ信じている。
 何故だ。何故あの男は私に抗う。どうして私のモノにならない。どうして……

――どうして……劉備なの……っ

 ジクリと胸が疼いた。
 あのバカの顔が頭に浮かぶ。黒麒麟ではないあのバカの、平穏に生きる笑みが。

――まだ! あいつは! あのへらへら笑ってばかりの女の元で! その誇り高き命を賭けると!

 苛立つ、心の芯その奥まで。
 道化師を知っていれば知っている程に、余計にあの女の元に居るあいつを想像するだけで許せない。
 誇りへの侮辱だ。其処に戻って何の意味がある? 何の価値がある?

――お前は私の元に居ればいいの。それに約束したのはあなたでしょう……く……やっぱりあいつは、厄介だわ。

 また心を乱されている事に気付く。
 これではまるで欲しいモノが手に入らない子供だ。
 それに今のあいつの約束と黒麒麟は無関係。私と道化師が個人的にした意地だらけの約束は、黒麒麟が知るはずもない。
 しかし……公孫賛と出会って戻るという確証もない。

 なのに何故、介入したくなるのか。
 何故これほどまでに、あいつの行動を制限したくなるのか。

 あの胡散臭い占いを聞いたからか?
 否、否だ。あんなくだらない予言等に惑わされてたまるモノか。
 雛里の狂おしい程の想いを傷つけるあの女……管輅。この街で次に見つけた時は出禁にしてくれる。

「……ねぇ、華琳様。あたし行ってきてもいい?」
「……却下よ。あなたと張コウ隊は西涼軍との戦闘に出て貰わなければ困る」
「あたしのバカ共なら桂花でも扱えるよ? でも狂った秋兄を止められるのは同じ五将軍しか居ない。いくら強いって言っても、徐晃隊と猪々子じゃ力不足じゃん」
「それでも却下。それに此処で将を追加するのは益州への対面的にもよろしくない。益州を落とすのは孫呉を手に入れてからと決めているのだから、今回は我慢なさい」
「やだ」
「わがままを言わないの」
「だって……」

 肩を落とした明は、目を合わせずに自分の身体を抱き締めた。

「……夕と約束したんだもん。あたしの幸せを掴むって」

 座った私を上目使いで見上げながら、彼女は哀しげに言葉を流した。

「欲しいんだもん。あたしと同類のあの人が。
 哀しくて苦しくて辛くて壊れそうだったあたしを、ただ抱きしめてくれたあの人が。
 誰に憎まれても死ぬまで生きろって、あたしの想いを掬ってくれるあの人が。
 後悔して過去に生
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