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懐かしい校舎
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第三章

「実はね」
「って結婚してたの、あんた」
「そういえば左の薬指には」
「あるわよね」
「これね」
 その指輪を皆にも見せる。銀色のリングである。それが確かな光を放っている。
「これのことね」
「そうよ、それよ」
「指輪。今気付いたけれど」
「そうだよな」
「三年になるのよね」
 彼女は指輪を見ながらにこりと話すのだった。
「もうそれからね」
「結婚してかあ」
「まあ私も結婚して一年だけれど」
「私は来年ね」
 女性陣がここでそれぞれ話す。そして男性陣もだった。
「俺も結構長いけれどな」
「俺やっと婚約できたよ」
「髪のあるうちに結婚できてよかったよ」
「だよな」
「結婚はした方がいいぞ」
 先生もここで皆に言う。
「それはな」
「ですよね。離婚する奴もいますけれど」
「結婚はした方がいいですよね」
「そうそう」
「それに尽きるからな」
 こんな話から何時の間にか昔話になる。学生時代の話だ。
 それはそれぞれの思い出になった。その話になっていく。
「御前あの時思いきり寝てたよな」
「チョーク飛んで来るとは思わなかったよ」
 実に古典的な話であった。
「頭にこつん、だったからな」
「そうそう、額に見事に当たったからな」
「見ているこっちも驚いたわよ」
「全く」
「当たった方はもっと驚いたよ」
 彼はまた言った。
「何だ、って思って起きたらよ」
「先生も起きろ、って一言だったからな」
「物凄く重く低い声でな」
「あれも怖かったよな」
「ああ、あれはな」
 こんな話もした。そうして先生が言ってきた。
「あの先生はそうなんだよ」
「外見滅茶苦茶怖いですよね」
「最初見た時この人何だって思いましたよ」
「うちの先生はそうした外見の人多いからな」
 先生は今度はこう言った。
「特に柔道部はそうだけれどな」
「柔道部ですか)」
「あそこは確かに」
 皆も柔道部という名前が出ると頷いた。
「全国クラスですしね」
「顧問の牟田野先生あれだし」
「ああ、強いからな」
 先生もその牟田野先生という先生について言う。
「今も生活指導だ」
「じゃあ今も風紀はいいんですね」
「それだったら」
「いいぞ。相変わらずな」
 先生は断言してみせた。
「元々うちの学校はそういうのはいいけれどな」
「そんなに悪くなる筈がありませんしね、うちは」
「確かに」
 それは確かに話す。そして話は少し変わってきた。

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