開演
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った。
傀儡というものを大雑把に説明してしまえば、操り人形のことだ。人形を操って、武器を仕込み攻撃する、それが傀儡の術だ。
祖母から傀儡使いとしてのノウハウを受け継いで、人形を操ることに没頭していく。
しかし、最初からスムーズに動かすことが出来ずに何度も指が引きつり、筋肉痛で疲労し眠るのがあっと言う間だった。
初めて人形の内部を見て自分で分解と設計を変えてみる。傀儡の知識の奥底へと自ら足を踏み入れていく。扱いに慣れてきたら、傷ついた部分を自分で修復し、知識、経験を蓄積していく。
才能と言ってしまえば、答えは簡単になってしまうだろう。
それは四六時中、傀儡のことだけに没頭できる環境と本人の意欲、関心がなせる努力だ。
ここまでなら、ごく普通の家庭内容、いやむしろ、恵まれている方だろう。
家に帰れば、両親と暖かい料理が待っていて、幸せな眠りへと落ちる。
自分の心が歪んだのはいつ頃だったか?
人として忍としての道を外れたのはいつだったか?
里から追われ、砂場や森を転々とする生活を始めたのは。
思い返してみると。
傀儡使いとして修行していたある日、両親が死んだ日に起因すると述懐できた。
任務中の殉死か、病死だったかイマイチ判然としないが死んだ事実に変わりない。
初めての肉親の死に遭遇した。葬式で多くの弔問客が来たことから人付き合いをしっかりしていたのだろう。
真っ白な布団を2つ並べて、父と母の間に自分は座る。
時々、思い出したかのように手を伸ばして呼吸を確かめる。
もしかしたら、父と母が息を吹き返したのではないか、そう思ったからだ。
鼻先に持っていく。しかし感じるはずの息は感じない。
3分後、5分後、10分後??????1時間経っても両親は変わらずに死に続けていた。
食う物も食わず、飲む物も飲まず。
両親が目を覚ますのを待っている。
自然と頭を過ぎったのは、「動け!」という言葉。
それにある種の既視感を覚えた。
初めて人形を動かした時の感覚と相違ない。
技術不足で思うように動かない人形に苛立ちながら思った言葉がそれだった。
人間と人形の境目が虚ろになった気がした。
父と母は死んだのではない
人形になった
人形なら動かせる、自分で修理が出来る。
もう一度、両親の愛情が手に入る。
その一心で埋葬された両親の遺体を掘り出して、傀儡にしていく。匂いはキツイが不思議と楽しさがあった。
人間を傀儡にするのは前代未聞だったが、サソリには造れそうな気がした。
腹を裂いて、内蔵を取り出す。
使えるところを吟味していき、両親の形を写真で思い出しながら寸分違わぬ傀儡にしていく。
メスで内部を覗いて両親を深く知ること。
奇しくも、傀儡の世界に没頭することに似ていた。
固まった筋肉を削り、骨を見てどのように人間
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