開演
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前口上
とある公園の昼下がり、子供たちは限られたスペースで遊んでいた。昨今起きている遊具による不慮の事故によりかつてのたくさんあった遊具は撤去されてしまうという寂しい過去があるが、遊んでいるものにそんな過去など知らない。砂に木の棒で絵を描き、友達とかけっこをしている。学生たちがベンチに座って携帯ゲームで遊び、写真を撮ってはネットに投稿し自分の存在の証を残していく。
そこへカートを押して進んでいる1人の女性がいた。真昼の中で黒い外套を羽織っている。
いきなり公園に奇妙な恰好をした女性が現れればいやでも視線の対象となり、遊ぶ手を休めてしばし見入る。
しかし、フードを被った女性は視線に気にする素振りを見せずに
ピーヒャララ
ピーヒャララ
ラッパを軽快に鳴らしながら公園にいる人々の注目をさらに集めていく。
「はい、寄ってらっしゃい。見てらっしゃい。痛快の人形劇が始まりますよ。見物料は今回に限り無料といたします」
女性は、フードを深く被っているがガラスのように透き通った声で警戒を持って固まっている子供や学生に向けて大きな手振りで宣伝している。子供は好奇心でゆっくりとしながらも女性の前に移動した。
その様子を見て満足したようにフードの隙間からニッと笑顔を向ける。
「はいはーい、それでは上演を始めますよ。来てくれた方には飴を差し上げます」
と言うと、ポケットから果物キャンディーを出して子供にあげていく。そして、カートの蓋を開けて脇にあるレバーを回しだすと木製のステージが上がり、赤い幕がシャーっと開いた。
そこで女性はステージの後方に回り込むと慣れた手つきで人形から伸びている糸を指につける。
出現したステージには赤い髪をした目つきの鋭い人形が動きだし、スポットライトを浴びて一礼をする。
太鼓をポコポコと叩いて開幕音を鳴らす。そして、義太夫節のような独特の語り口調で物語の展開を語っていく。
一礼をした後でスポットライトが途切れて、荒涼とした砂漠地帯を模した背景に赤い髪の人形が両腕をパッと上げた。
彼の名前は「赤砂のサソリ」
この演目での主役となります。ぜひとも覚えていてください。
彼は忍と呼ばれる危ない任務を遂行する里の一つ「砂隠れの里」で生を享けました。
すると糸で操られた老婆の人形が上手から現れる
彼のお婆さんは、優秀な傀儡使いでした。傀儡とは人形を操り仕込んだ仕掛けや罠で敵を攻撃する忍術の一つです。祖母の背中を見て育った彼は自然と興味が傀儡へと向かい、日夜傀儡の術の修行にのめり込んで行きました。
そこで木で出来た簡単な人形が出てきて、サソリの腕と連動するように動いていく。
彼は、早熟でみるみる天才的な傀儡の使いとして名をはせるようになりました。
しかし彼の興味はむしろ傀儡使いというよりは傀儡制作へと向きました。最初は、
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