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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
28話 水都の陰
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礼して搭乗し、最後に俺が船尾に立つ。船頭が居ない以上は俺がこの役目を担うこととなるのだろう。クーネ達もまた、クラシカルな黒い船体のゴンドラに乗り込み、レイが櫂を握っている。やはり長物武器を持つプレイヤーだからこその人選なのだろうか。
 ともあれ、ここを出るまでに衝突事故だけは起こしたくないものである。


「開けるぞ!」


 声が密閉された空間に反響するなか、レバーが引かれて水門が左右に分かれてゆく。正面に開いた出口から覗く空は既に夕闇に染まっている。付属されていた取扱説明書を一通り読み、操作方法は把握した。要は、進みたい方向に推進力が働くように櫂を傾けて漕げば良いのだ。


「行くぞ」
「ボク達も行こっかー!」


 ゆっくりと櫂を倒すと、船は難なく前進する。そのまま水門目掛けて進路を調整しつつ速度を整え、水路に出る。遅れて水門を抜けたクーネ達の船も速度を付けて並走の位置まで船体を進めてくる。意外にもレイの櫂捌きが様になっていて、少しだけ驚かされる。


「燐ちゃん、すごい上手じゃない?」
「このくらいだったら誰にでも出来るだろうよ。とりあえず、拠点まで戻るか」


 ヒヨリも頷き、拠点を目指して進路を西に取る。確か、船舶は擦れ違う時に右側に避けるのが国際ルールで決まっていたと思ったので、ゴンドラを水路の右側に寄せて進むことに。
 このまま戻って今日は早めに休息を取ろうと考えていたところ、並走する船から僅かに身を乗り出したクーネが声を掛けてくる。


「ねえ、リン君、私達もどこか拠点に出来そうなところを探したいんだけど、オススメの場所ってある?」
「宿屋は埋まってるだろうな。商業区画の方だと穴場は幾つか見繕えるだろう」
「ホント? もしお願いできたら、これから一緒に――――うわッ!?」


 言いかけて、クーネは慌てて後ろに仰け反る。原因は、船体が左右に揺れるクーネ達のゴンドラと俺達が乗るゴンドラの狭い隙間を割り込んできた一艘のゴンドラだ。


「どこに目ェ付けてんだ!そんなとこでモタモタしてんじゃねえ!」
「テメェこそ前見て船漕ぎな!!」


 いかにも無謀な運転をして、あわやクーネが巻き込まれるかという状況であったにも関わらず、さもこちらに非があるかのように相手方の船頭は罵声を飛ばして去ってゆく。当然、リゼルが凄むものの、相手は水路を曲がってしまい、声など届くはずもない。


「………昼ぶりにキレちまったよ。おい、アカリ! さっきの追い掛けて文句言ってやるよ!」
「ちょ!? そっちの名前はダメだって! それに、あんな速いの追い掛けられないでしょ!?」
「あんなナメた真似されて黙ってられるか!」
「リゼル、私はもう大丈夫だし、怒ってたらニオが怯えちゃうでしょう?」

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