月下に咲く薔薇 24.
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驚かせた。
「意識が戻ったのか?」携帯端末ではなく、クロウは虚空に問いかける。アイムの意識が、というより男がまだ存在していた事に、小さな安堵を覚えた。
アリエティスが分解・吸収されていないのであれば、敵は最も欲しているものを未だ手にしていない事になる。吉報だ。
「起きているなら、話は早い。援軍が来たし、さっさと俺をアリエティスの外に出せ」クロウはアイムに、『偽りの黒羊』と『揺れる天秤』の完全な分離を提案した。「発芽の起点は俺だ。物理的な距離が生まれれば、植物の何割かは俺の体についてくる。そっちも、少しはやりやすくなるだろ」
『分離? …クロウ。お前、今何処にいるんだ?』と問う万丈に、アイムが答える。
『彼は、アリエティスの中です』
『収容したっていうのか?』
ロックオンからは、疑心暗鬼な思いが伝わってきた。
「多分だと思うが、半分当たって半分外れだ」
横から滑り込ませたクロウの判定に、『どういう事だよ。問答してる時間なんてないぞ』と隻眼のスナイパーが急かした。『アイムが食われる前にどうにかしなくちゃまずいだろ!?』
「わかってる。だが、アテナが送ってくれた映像で確信した。今、俺の周りだけがまだ赤く光ってる。そこからも見える筈だ。赤く光っている部分が。俺の周りも見事に赤い景色だぜ。そのくせ、誰もいない」
つまり、先程アイムから聞いた話はある意味事実という事になる。クロウの視界に入っていたあの赤一色の光景は、そもそもアリエティスの周りに広がっていた異世界のものではない。アイムは、クロウをアリエティスの内世界に取り込んだ上、敵襲を避けるべく愛機で異世界へと転移したのだ。
バラを囲み突入部隊を漂わせている無重力空間は、黒に傾いた白濁色をしている。それが、異空間が持つ元々の色合いだ。
『つまりアリエティスは今、自分の内側に発芽の起点を抱え込んでいるのか』
合点した桂が、溜息をつく。
『なら、どうすりゃいい? 発芽が原因でアリエティスが食われかけてる。要救助者と危機的状況の原因が同じってなると、俺達は何から手をつけるべきなんだ?』
『僕達の救出が失敗しても時間をかけすぎても、アリエティスは一気に食べ尽くされるかもしれないんですね』
物騒な話を、褐色の美少年が平然と漏らす。
しかし、それはZEXISが想定すべき最悪のシナリオだ。
アイムの抵抗は無限に続けられるものではない。短時間での解決は最優先事項だが、Dフォルト対策に欠けたZEXIS機のみによる攻撃だけでは救出が極めて困難な上、最も頼りとなるアリエティスは加勢を期待できる状態になかった。
「だから、俺とアリエティスの分離をアイムにやらせたいのさ」
『アリエティスから、クロウ・ブルーストを出す事、は、できません』ようやくアイムが、ぽつりぽつりと回答する。『今、ア
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