月下に咲く薔薇 24.
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塚長官は、実を取る為に小悪を行うという正義の矛盾を自ら背負い込む事を厭わなかった。不安定な組織の維持、ただその為だけに。
確かに褒められた手段ではないが、結果の羅列を見渡しただけでも今の地球圏にZEXISが必要なのは明白だ。他でもないアイムが敢えてその方法を踏襲したなどと反り返れば、当然腹が立つ。
突き放したクロウの態度に『ずるい対応ですね』と虚言家が不平を唱えるので、「てめぇにだけは言われくねぇ!!」とやり返す。
『私とて、結果は出したいのです。信用の無い者なりに、こうするより他にありませんでした』
そして、ZEXIS流を踏襲したと標榜し、嘘と成果の両方を掲げて再接触に立ち会いたいと指揮官達の前で再び唱うのか。
『クロウ・ブルースト。あなたの中に仕込まれた異物、発見しましたよ』
「本当に見えてるのか!? 今度も嘘じゃないんだろうな」
どの辺りなのだろう、と服越しに腕や腹を見回してみる。そして、視線は右手の中指に辿り着いた。
クロウが異世界に落ちた時、痛みを感じた唯一の場所。何かが体内に侵入した場所と確信している部分でもある。
『指先ではありません』クロウの思考を読んだのか、問うより先に答えが来た。『問題なのは、何かがその異物を包み込んでいる事です』
「取り出しにくいのか?」
『ええ。その為、ブラスタの投入を希望したのですが。では、始めましょう。「偽りの黒羊」だけで、あなたと「揺れる天秤」の接続を揺らします』
アイムの肯定に呼応するように、周囲の赤色が透明感を帯びた。
話の筋だけで、何をやろうとしているのかおぼろげながら理解はできる。しかし、生憎その手段の正否を判別する術がクロウには無かった。
スフィア・リアクターが存命である限り、スフィアと所持者は一対一の関係にあるという。通常、他のスフィア所持者であろうと他の一対に干渉する事は極めて難しい。その為、奪取を決意した者は相手の機体ごと破壊し所持者の命を奪おうとする。
今、クロウから異物だけを取り出そうとしているアイムなどは正に典型と言うべき存在だ。更には、全ての所持者を追っている魔人アサキムも。
彼等覚醒の進んだスフィア・リアクターは、群衆の中から同種の人間だけを巧みに嗅ぎ当てる。つまり、所持者を通し繋がりを持っているスフィアを感知しているという事でもある。
影響し影響される関係を覚醒の進んだ者が主導し、一体化した中で異物の存在だけを拒絶すれば。その結果に、アイムは期待をしていると思われる。
ブラスタを使えば成功する確率が上がるという話は、今の延長線上に置いて考えれば筋が通る。ZEXISは、今件にブラスタを投入すべきだったのかもしれない。
しかし、クロウ自身の内側にアイムが進入するところを想像した途端。何かが男の願望に拒絶反応を起こした。
異
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