Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 17. Talkin’ Red Heath, Leavin’ Black Cat
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エが信じたアイツらは、テメエを信じるアイツらは、仲間の本心も受け止めてやれねえようなクズじゃねえ!! それは他でもない、テメエ自身が一番わかってるはずだろうが!!
例え自分が弱くても、戦いから逃げちまおうとも――仲間を信じることからは、絶対に逃げるんじゃねえよ!!」
一際強い彼の声が橋の下に響き渡り、ゆっくりと静まっていく。それに合わせるかのように彼の手に籠った力が抜けていく。やがてその手が離れるのと同時に、私はそのままぺたりと地面に座りこんだ。壁を射抜き、心の芯まで叩き込まれた彼の声は、私から立ちあがる力さえも奪っていた。
立って私を見下ろす一護さんと、座ったままぼうっと虚空を見る私。二人そろってしばらくそのまま動かないでいたけど、やがてどうにか口を動かす力は出てきた。震える唇を今までにないくらい必死で動かして、出ない声を絞り出すようにして、私は一つの問いを投げる。
「……私は……私は、戦いから逃げても、いいのかな……? なんの役にも立ってない私が、一人で逃げて、生きてもいいのかな……」
「当たり前だろ。俺もアイツらも、嫌がる女を戦線に引っ張り出して喜ぶシュミは持ってねえ。そんな奴を連れて戦うより、安全なとこで大人しく待っててもらう方が百倍気が楽だ」
それに、と一護さんは付け加え、しかめっ面で私を見る。眉間に皺の寄った不機嫌そうな表情は、もう怖くなかった。むしろ、意地を張ってるみたいで、ちょっと面白いかも。
と思っていたら、不意に一護さんの顔に笑みが浮かんだ。初めて見た彼の不器用な笑顔に、喉の底、胸の奥が締め上げられるような感じがして、
「もしお前が危なくなったら、黒猫団の連中が、リーナが、俺が、必ず護ってやる。だから大丈夫だ、安心しろ」
その言葉で、私の中の何かが弾けた。
涙が一気に溢れ、視界がめちゃくちゃに歪む。両手で目を覆う直前、一護さんの慌てたような顔が見えた気がしたけど、もう堪えきれなかった。
このゲームが始まって以来、いや物心ついて以来初めて、私は声を上げて、思いっきり泣いた。
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