Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 17. Talkin’ Red Heath, Leavin’ Black Cat
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って一週間もしねえ俺に洗いざらい吐いちまうくらい、シンドくてしょうがねえんだろうが。だったら今言ったことの全てを、黒猫団の連中に話してやれよ。お前一人で背負い込んだところで、どうこうなる問題じゃねえだろ」
まるで、私の心を見透かしたかのような、一護さんの言葉。その言葉に、私の心は大きく揺れ動いた。
確かに、フィールドに出たくない気持ちはすごく強い。こうやって逃げ出して、隠れてなきゃ抑えられないくらいに。もし、それを皆に言ってしまえたら、どんなに心が安らぐだろう。甘美な安穏に、私は心底魅かれていた。
でも同時に、その罪悪感には耐えきれそうになかった。皆を危険なフィールドに送り出しておいて、自分は安全な圏内にいたい。そう訴えることが、どれほど自分勝手で、どれだけ卑怯なことか、考えなくてもわかった。安穏の対極に、自分の罪を恐れる気持ちがとぐろを巻いた。
二つの気持ちがせめぎ合い、でも、でも、とうわ言のように繰り返す私に、ついに一護さんがキレた。胡坐を崩して立ち上がり、うずくまる私の正面に仁王立ちになる。そのまま壁を破らんばかりの勢いで、私の頭上に右手を叩きつけた。紫色のエフェクトが散り、一護さんの激情に満ちた顔を暗く照らした。
「一人でなんもかんも抱え込んでんじゃねえ!! テメエのその不安も恐怖も、仲間に受け止めさせろよ!! 一人じゃどうしようもねえモンが山ほどあるから、仲間ってのがいるんじゃねえのかよ!!」
「でも……でも、そんなこと言ったら、きっと皆に、仲間に嫌われる……どうしようもない臆病者だってからかわれて、一人だけ逃げるのかって怒られて……それで……っ!」
「思ってもねえこと言ってんじゃねえ!!」
ろくに考えもせずに発せられた私の言葉は、その何十倍もの強さの否定で消し飛ばされた。壁に突いていた一護さんの手が動き、私の胸倉を思いっきり掴む。
間近に引き寄せられた彼の顔はとてつもなく険しくて、怖くて、でも何故だか、目を逸らすことは出来なかった。強烈な意志の籠ったブラウンの瞳から、一ミリたりとも視線を外せない。その目の輝きは怖くはなく――むしろ、煌々と輝く満月のように、まぶしくて、きれいだった。
「テメエの仲間ってのは、そんなことで人を嫌うような奴らなのか!? ケイタが、テツオが、ササマルがダッカーが、必死こいて明かしたテメエの本心を鼻で笑うような奴らだと、本気で思ってんのか!? ちげーだろ!! そんな風に思ってる奴らと半年もツルんでられる程、テメエの面の皮は厚くねえだろうが!!」
マントの襟を掴む彼の手に、一層の力がこもる。ギリギリという音を立てて軋むのは、果たしてマントか、それとも――今までずっと張ってきた、私の心を覆うバリアか。
「どんだけ足を引っ張ったって、どんだけ壁作ったって、テメ
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