Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 17. Talkin’ Red Heath, Leavin’ Black Cat
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護さんが、用水路の入り口から腕組みをして私を見ていた。
「……どうして、こんなところが分かったの?」
強ばる口をなんとか動かして、私は問いかけた。こんな街はずれの、昼でも誰も来ないようなさびれた用水路の橋の影なんて、そうそう思いつく場所じゃないと思ってたのに。
「この近くに、昔よく使ってた肉屋があんだよ。だから、この辺の風景は覚えてたんだ。
それにこの前、視界を真っ暗にすると落ち着くとか言ってただろ。ビビリのお前が外に出るとは思えねえから、いるのは多分街中。そんでこの街の中で、いっつも薄暗い場所っつったら、俺はここしか知らねえ。だからここに来た。そんだけだ」
そう言って、一護さんはツカツカとブーツの踵を鳴らして橋の下に入ってきた。背の高い彼の全身が夕日に照らされ、私には大きな影法師のように見えた。
「ケイタたちは迷宮区に探しに行ったぞ。すげえ焦ってた。あのお人好し共に、余計な心配かけてんじゃねえよ」
「……うん」
「うん、じゃねえよ。俺に見つかったんだ、大人しくホームに帰れ。そんで連中に詫びいれとけ」
ほら行くぞ、と一護さんは手を伸ばしてきた。けど、私はその手を首を振って拒んだ。苛立ちを含んだ唸りが聞こえる。
「ダダこねんな。とっとと立て。立たなきゃ俺が担いで連れてくぞ」
再び手が伸ばされ、また私はそれを拒む。同じことの繰り返し。
一護さんはイライラを発散するかのようにガリガリと頭の後ろを掻くと、その場にどっかりと座って胡坐を掻いた。流石に本当に担ぐようなことはしないらしい。もし担がれちゃったらちょっと面白かったかも、と一瞬思ってしまったけど、一護さんが口を開く気配を感じて、慌ててその考えを打ち消す。
「……お前、なんで家出したんだよ。戦うことが、そんなに怖いのか?」
「……うん、怖い。とっても、怖いよ。怖くて怖くて、そのままぺしゃんこになりそうなくらい」
そう言って、私はぽつりぽつりと一護さんに本心を吐露した。戦うのが、死ぬのが怖いこと、それが原因で眠れてないこと、時間をかけて、全部を話した。耳が痛くなるような静寂の中で、私の声だけが響いていた。
一護さんは相槌さえ打たずに黙って聞いていたけど、私が話し終えて口を噤むと、
「……それ、今まで他の連中に、言ったことあんのか?」
静かな声で、そう訊いてきた。そんなことは、もちろんない。私ははっきりと頭を振って否定する。
すると、一護さんは小さくため息を吐いて、こっちを見た。目つきは怖いけど、端正と言える顔立ちが街灯の光に照らされて、少しドキッとする。そんな私の内心を余所に、彼はいつものしかめっ面を作ると、
「じゃあ言えよ、それ全部」
「…………え?」
「キツイんだろ? 訓練から逃げちまうくらい、会
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