Chapter 3. 『世界を変えた人』
Episode 17. Talkin’ Red Heath, Leavin’ Black Cat
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まうようじゃ、攻撃を食い止めるなんて出来やしねえもんな。ケイタと相談して、前衛に転向するヤツ変えてやれよ」
「二度ほど、座学の時にそう提案したんだけどね。かなり渋っていたよ。
どうらや、黒猫団のメンバーの中で、サチさんのメインスキルの熟練度が一番低い、という点が、彼らにとって大きな理由になってしまっているようだ」
「……なんで、メインの熟練度が低いってだけで、サチを前衛に変えたがるんだよ。パラメータなんて、一か月も死ぬ気で頑張りゃ元のスキルと同じくらいにはできるじゃねえか」
「最前線に籠ってる私たちと彼らを一緒にしないの。それに、これはある意味仕方ないこと。ビルドを始めて間もない人は、そうなりやすい」
俺が疑問を呈すると、横から紅茶片手にリーナが応えてきた。今度は口周りに食べカスは付いてない。
「今まで自分が鍛えてきた武器カテゴリを新しいものに変えるのは、かなりの抵抗がある。今までの経験したことが通用しなくなるのではという不安の他に、数値的なロスもその原因の一つ。
このゲームが始まって半年、攻略組ではない彼らは、きっと地道にコツコツと熟練度を上げてきたはず。その苦労をリセットするには、相応の決意が必要になってくる。少しでもそのロスを減らすべくまだ数値の低い者に転向を押し付ける行為は、その善し悪しはともかくとして、一応の理解はできることだと思う」
わかるようなわかんねえような説明だ。俺も曲刀からカタナへとメインスキルを変えてはいたが、あれは最初からカタナが目的だったから、大した未練なんて無かったし。
ビミョーに納得してない俺とは対照的に、ディアベルはリーナの意見に賛同するように深く首肯した。
「うん、オレもそう思う。長い間鍛えてきたスキルに愛着があるばかりに固執してしまうのは、仕方のないことだ。
とはいえ、黒猫団の皆がもっと上を目指すと言うのなら、今のままではいけない。誰かが前衛に転向するか、あるいは、今のスキル構成のままで前衛の負担を減らす工夫をしないことには――」
「し、失礼します!」
長々としたディアべルの言葉は、突然開いた部屋のドアの音と、その音源の主の声によって掻き消された。見るとそこには愛用の両手棍を持った男、ケイタが息を弾ませながら焦燥に駆られた様子で立っていた。
俺たちの誰かが何があったのかと問う前に、黒猫団のリーダーはその表情と同じくらいの焦りを含んだ声で叫ぶように言った。
「サチが……サチがいなくなった!!」
◆
<Sachi>
昔から、怖いものが嫌いだった。
猛獣、刃物、銃、妖怪、幽霊。例を上げたらキリがないくらい、私の周りには怖いものがたくさんあった。物や生き物ものばかりじゃない。怒られることとか、罵られることみたいな
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