6.紅茶とショートブレッド
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え?!! 職権乱用ですよ司令〜?!!」
さっきまで不必要な緊張と、鎮守府にあるまじき殺気につつまれていたティータイムに、やっと平穏と安心が戻った。美味しいものに目がない提督は、紅茶とショートブレッドという組み合わせを今まで私たちだけで楽しんでいたという事実に、我慢がならなかったのだ。美味しいものを食べたいという自身の欲求に、提督は、ただ愚直なだけだったのだ。
そのことが分かったことで、私の全身から緊張が抜けていったのがわかった。正直、提督が何にそこまで憤慨していたのかがまったく分からず、私は普段の戦闘以上に緊張していた。
「テートク〜…よかったデス〜…私の紅茶とショートブレッドが気に入ってくれたんデスネ」
「ああ。よかったら今度紅茶の淹れ方とショートブレッドの作り方教えてくれ。自分でも作れるようになりたい」
「安心しまシタ…ワタシ、なんでテートクが怒ってたのかさっぱり分からなくて、怖かったネー…」
「おぉ…マジかすまん…どうもうまいものに目がないというか…悪かった…」
提督は申し訳なさそうな苦笑いを浮かべた後、私にペコリと頭を下げた。本来なら司令官の立場にあるものが部下に頭を下げるだなんてあってはならないことだが、この人は自分が悪いと思えば、私達に簡単に頭を下げてくれる。こんなことを大の大人の男性に言うのも失礼な気がするが、彼が私たちに頭をペコリと下げる姿は、どことなくかわいい。
なんだか今なら、ある程度困らせても許してくれそうな気がする…そう思った私は、ちょっと意地悪をしてみることにした。
「テートク……」
「おう。どうした?」
「頭を撫でてほしいデス」
「ファッ?!」
「ワタシたちは日頃のお礼でテートクをおもてなしするためにティータイムに招待したのに、テートクは怒ってワタシたちをフィアーなアビスにたたき落としたネ」
「“恐怖のどん底”って言いたいのか金剛?」
「だから、ワタシの頭を撫でてくれたら許してあげマース」
「む…つーかそれでいいのか金剛…お前大人だろ」
「ホラホラ。早くワタシの頭を撫でるデース」
さっきとは立場が異なり、今度は提督が目に見えて狼狽している。いい気味だ。少しはさっきの私達の困惑を味わうべきだ。大の大人が大の大人の頭を撫でる機会なぞ、そうそうあることではないことは、私はよく知っている。ましてや男性が女性の頭を撫でる機会なぞ、恋人同士でもない限りそうそうあるはずがない。『やれ』と言われて素直に『はい』とは言えないはずだ。私達のさっきの困惑を知るがいい。
だがその瞬間は、本当に訪れた。それも、意外にすんなりと。
「んー……しゃーない。金剛たちを困らせたのはおれだ」
「へ?」
提督は立ち上がり、私の頭を撫でた。大きさこそ男性のそれとしか思えない
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