暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
共に在る為に
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 「ごちそうさまでした」
 両手を合わせたコーネリアの言葉でハッと我に返る。
 あれ? 俺、いつの間に帰って来たんだ? しかも、夕飯はしっかり食べ終わってるとか。
 何これ怖い。
 「ウェルス、皿貸して」
 「ん? はい」
 コーネリアが差し出す手に、空の皿をひょいと乗せる。
 一通り集めた物を少ない水で洗い、丁寧に拭いてから棚へ戻す。
 それが終わったら、今度は米を炊く下準備を始めた。
 ……改めて観察してみると、忙しく動き回ってるんだな。俺とも両親ともあんまり話してないし……
 え。ちょっ
 「コーネリア!」
 ザルに米を掬ったと思ったら、いきなりバタッと倒れた。
 慌てて駆け寄り、横向きに倒れた体を抱き起こす。
 「え!?」
 熱い。なんだこれ、コーネリアの体が滅茶苦茶熱い!?
 「退きなさい、ウェルス! アンタは触っちゃ駄目!」
 母さんが俺からコーネリアを奪って抱え、一階に在る両親の部屋へ運んで行く。
 肩越しに少し見えたコーネリアの顔はありえないほど真っ赤に染まって、凄く苦しそうに歪んでた。
 「父さん、あれ何? あいつ、どうしたの!?」
 「落ち着け、ウェルス。俺は医者を呼んで来る。お前は此処を片付けるんだ。良いか? お前が慌てても何も解決しない。やれる事をやれ。判ったら動け!」
 「父さん!」
 玄関扉を開いた父さんは、月が光る夜の闇へ溶けて消えた。母さんは部屋に入ったまま出て来ない。
 俺は……そうだ。慌てても仕方ない。
 物置の箒を持ち出して、散らかった米粒を集める。
 ……おかしいな。どうしてこんなに集まりが悪いんだ? 大した量じゃないのに。
 「コーネリア……」
 息苦しそうだった。汗が滲んでて。触れた熱を思い出すと、俺の手まで熱くなったみたいに震える。
 ……大丈夫だよな? 父さんが医者を呼んで来るって言ってたし、母さんが看てるから大丈夫。
 大丈夫だ。きっと……

 「手は尽くしました。これで治まらなければ、残念ですが」
 「そんな……なんとかならないのですか!?」
 「彼女の体力次第と言いたい所ですが、今回の場合は過労が病を引き込んでいます。此処まで体を酷使した子供なんて、聞いたことありませんよ」
 「コーネリアは辛いとか苦しいとか、一言も……こんなになるまで一言も言ってくれなかったなんて……!」
 「心配を掛けたくなかったのでしょう。とにかく、今は見守るしか」
 「コーネリア……ああ……っ! ごめんなさい……ごめんなさい!」
 軽く開いた扉の奥。眠るコーネリアの周りで、父さんと医者が泣き喚く母さんを慰めてる。
 コーネリアが倒れたのは、過労が原因の病気。体を酷使した所為。
 ……酷使って何だ。
 朝早く水を汲んで、手伝う程度に皿を洗ったりして
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ