アインクラッド編
74層攻略戦
久方振りの死闘を 02
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「我々は一般プレイヤー解放のために戦っている! 諸君が協力するのは当然の義務である!」
「ちょっとあなたねえ……」
「て、てめえなぁ……」
爆発しかねない調子で唸ったのは2人。
先ほどまではクラインさんだけだったけど、今度はそこにアスナさんが加わっていた。 2人とも完全に怒っている。 一昔風に言うなら『おこ』だ。
「ふふっ」
そんな一触即発の空気で、僕はいつもと変わらず笑ってしまった。
「何がおかしい!」
「ん? ふふっ、何がって中佐さん、おかしいことだらけだよ」
「なんだと?」
「だってさ、軍は今の今まで下層フロアに引きこもってたんでしょ? それがノコノコ最前線に来たと思ったら一般プレイヤー解放のために戦っている、だって? もうおかしすぎるよ」
「き、きさ……」
かあっと憤怒で顔を紅潮させたコーバッツは、僕の顔を改めて見て絶句した。
「貴様、戦慄の……」
「懐かしい名前だね。 でもそれはもう返上したから、今はただのフォラスだよ」
「貴様のような薄汚いオレンジ風情が私に口答えするな!」
ミシッと言う不穏な音が後ろから聞こえる。 アマリがディオ・モルティーギの柄を恐ろしい筋力値で握りしめた音か、はたまた空いている手をきつく握った音か、背を向けている僕には判断できない。
ただ確実なのは相当に怒っているだろうと言うことだけだ。
「マップデータを提供すればいいんだな?」
こちらも負けず劣らず怒っているらしく、クラディールと相対した時以上に重い声音でキリトが割り込んできた。
このままコーバッツが喚こうものならアマリの我慢が限界を迎えると思ってのことだろう。 そして、その予想はきっと正しい。
「いいの?」
「どうせ街に戻ったら公開する予定だったんだ。 悪いな、勝手に決めて」
「いいよ。 『マップデータで商売する気はない』でしょ?」
「まあな」
ひょいと肩を竦めたキリトは、手早くトレードウインドウを開いてマップデータをコーバッツに送る。 苦い表情のまま受け取ったコーバッツは、「協力感謝する」と、まるで気持ちの籠っていない上辺だけの謝辞を述べて踵を返した。
その背中にキリトが忠告を投げる。
「ボスにちょっかいを出すならやめといたほうがいいぜ」
「……それは私が判断する」
「さっきちょっと覗いてきたけど、生半可な人数でどうこうなる相手じゃないぜ。 仲間も消耗してるじゃないか」
「私の部下はこの程度で根を上げる軟弱者ではない! 貴様ら、さっさと立て!」
明らかに消耗している仲間(本人の弁を借りるなら部下)を気遣う様子もなく発した号令に、軍の面々は弱々しく立ち上がると、それでも健気に整列した。
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