第十七話「いつかの記憶」
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って、いって私のホッペを叩いたの。そしたら、そこがジンジン腫れちゃって……箒ちゃんの手形が真っ赤になって跡になったんだよ?」
「ハハ、あいつって小さいころから容赦ないんだな?」
その後も、彼女との雑談が続いた。一夏も、次第に比奈との会話に溶け込んで気軽にお喋りを堪能した。そして、彼女と言葉を交わしていくにつれて妙な懐かしさが込み上がり、次々と当時の記憶が蘇ってくる。
「……もう、夕方だね? 一夏ちゃん、何か食べたいものある?」
夕飯時になり、比奈は一夏にリクエストを問う。しかし、大抵今の男性はそうであるが、その問いに対する答えは既に定着している。
「何でもいいよ?」
と、一夏はそんな誰もが言う定着した言葉で答える。
「何でもいいって言われてもなぁ……」
当然、答えられた女性は大抵それに困る。だからといって、何でも作れるの? って聞かれたら自信がない。
「じゃあ……式神のお得意料理で」
「わかった……って、下の名前で呼んでよ?」
「え、けど……」
「……じゃあ、いいよ? 呼びやすい呼び名で」
少々残念がるが、一夏とて完全に比奈のことを思いだしたわけでもないので今でも彼女の家に招かれて寛いでいること自体に、やや遠慮を感じるのだ。
「じゃあ、今日は一夏ちゃんのために御馳走でも作っちゃおうかな?」
「え、わるいよ? そんな……」
「いいの! お客様ってこともあるんだし、ね?」
「う、うん……」
一夏は、遠慮しがちだが、腹もすいているため、ここは甘えて御馳走になった。
比奈の作った料理は、鶏肉を大量に使ったキャベツの野菜炒めだ。それを大皿に持って二人が箸で突っつきながら食事をとり、比奈は一夏へてんこ盛りの茶碗を指しだす。
「はい! いっぱい食べてね?」
「おお! こいつは美味そうだ……」
勿論、味の方も美味く一夏は何杯もお代わりした。一時間ほどで、比奈の料理を平らげた一夏は、腹を擦りながら満足する。
「美味かったぜ? 式神って、本当に料理が上手なんだな?」
「そうでもないよ? 小さい頃からおばあちゃんと一緒に家事をしてたから慣れているだけって感じ。女の子って、誰もがそうでしょ?」
「メガロポリスの女達とは大違いだ……」
田舎自体が女尊男卑の風習に毒されていないかは定かではないにしろ、この比奈という少女だけは少なくともそのような風習に染まるような人間ではない。
「大抵、田舎の人って都会に憧れるって言うけど……式神はどう?」
田舎者といったら、誰でもメガロポリスに一度は憧れるもの。そんな中で、この比奈はどういう風に首都を思っているのだろうか。
「う〜ん……今はそこまで興味ないかな? それに、『女尊男卑』っていう風習が広まっているから、何だか嫌だし行きたくはないよ?」
「そうだな……それがいい」
仮に、彼女がメガ
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