第十七話「いつかの記憶」
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わらない。授業を受け、学食を食べ、そして放課後は寮へ行って寝る。その繰り返しである。
「さ、上がって?」
比奈の自宅は神社からそう遠くはなかった。石段を下りて十分程度のところにある、かやぶき屋敷である。かやぶきとは今時珍しく、いかにも田舎らしい家だ。そして、そんな彼女の自宅のかやぶきを見上げている一夏は、微かに見覚えがあるような否かという曖昧な記憶を感じた。
「あの……お家の方は?」
と、一夏。なぜなら彼女の自宅はしんまりと静かで、比奈が「ただいま」といっても、それに返してくる声が聞こえなかったのだ。
「お父さんとお母さんは、私が小さいころに離婚しちゃったの……この家は去年亡くなったお爺ちゃんとお婆ちゃんのお家だよ?」
「そ、そうか……悪いこと聞いてすまない」
「いいよ? だって、私には一夏ちゃんがいるもん。一人じゃないよ」
と、比奈は気にしていないかのように明るく一夏に振舞う。おそらく、女尊男卑による影響で両親の仲が悪くなるのは例外ではない。それで威張りだす女親に呆れて、男親が出て行ってしまうか、不倫相手の男の元へ行くために女親が出て行ってしまうかどちらかである。
「……」
しかし、一夏はそんな孤独な彼女のことを忘れていたのだ。そう思うと、罪悪感に悩まされる。
比奈の自宅に上がってしばらくが経つと、彼女がお茶とお菓子を持ってきた。それを飲み食いしながら一夏は、IS学園での出来事を比奈に話した。勿論、リベリオンズやRSのことは秘密だ。
「そうなんだ……結構大変な思いしたね? それと……箒ちゃん、居たんだ?」
苦笑いして箒のことを問う比奈は、いかにも彼女のことが苦手そうだと言わんばかりの顔をしている。
「ああ、会って早々に屋上へ呼び出されたからまいったよ? この前なんか、腹に蹴り入れられたしね?」
「だ、大丈夫!? 箒ちゃんって、全然手加減しないから……」
そう、確かに箒は常に手を上げる時は容赦なく本気で叩いたり、殴ったりする。これは、シャレにならない……
――こいつ、箒が手加減しないことも知っているとなると……
小さいころ、顔見知りの一人かもしれないと、少しだが感じた。
「私も小さいころね? 箒ちゃんに思いっきり引っ叩かれたことがあったの。ほら、2年生の頃の夏休みで一夏ちゃん、こっちに来て夏風邪引いちゃったじゃない?」
「夏風邪……? ああ、何となくだがあったかもしれない」
これは本当だ。幼いころ、この里で酷く風邪に病んでしまい、三日間は雪子の家で寝込んでいた。
ちなみに、夏休み中はいつも雪子の自宅でお世話になっており、姉はその間親友と暮らしている。
「それでね? ちっとも具合が良くならないし、このまま一夏ちゃんが死んじゃったらどうしよう? って思ったら、急に涙が出ちゃってね? 一緒に居た箒ちゃんが『なくなっ!』
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