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RSリベリオン・セイヴァ―
第十七話「いつかの記憶」
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る彼女に、一夏はとっさに何か思いだせないかと必死になる。しかし、やはりあの女の子と遊んだ幼き日の残像しか境内にはない。とりあえず、そのことだけでも当てずっぽで答えた。
「……この境内で、よく遊び回ったかな?」
反応が不安になるも、しかし彼女は目を輝かせて頷き始める。
「うん! そうだよ? あのとき、いとこの箒ちゃんに虐められるのを覚悟で一緒に遊んだよね?」
「アイツを……知っているのか?」
まさか、箒がこの神社の子だということを茜は知っていた。
「当然だよ? だって、よく箒ちゃんに虐められていたところを一夏ちゃんが助けてくれたじゃない?」
「……」

「この罰当たりめ!」
「いたぁ〜い! いたいょ? 箒ちゃん……」
「篠ノ之! おまえ、また比奈をいじめてるのか?」
「い、いちか……!?」
箒は、顔を真っ赤にして一夏の前から逃げていった。
「ほら? 泣くなよ〜?」
駆けつけた一夏は、ハンカチを取り出して比奈の涙を拭いてやる。
「うぅ……だって、だってぇ……箒ちゃんがぁ……」
アイスを食べ歩いていたら、躓いてしまい、そのひょうしに手からアイスが飛んでいき、それが隣を歩いていた箒のワンピースについてしまったのだ。それで箒の怒りに触れてしまった比奈は、拳骨を数発くらって泣いたのだ。
「そっか……せっかくのアイスが?」
しかし、一夏は箒に殴られたよりもアイスをダメにしてしまったことに同情していた。
「よし! それじゃあ、オレが新しいアイスを買ってやるよ? ちょうどお小遣い持ってるからさ?」
「い、いいのぉ?」
「うん、一緒にアイス買おう?」
「……うん!」
泣き止んだ比奈は、一夏の手をギュッと握りしめて、一緒に駄菓子屋へ走った。

「あれ……?」
フラッシュバックのように蘇る謎の記憶。これは何だ? 一夏は、ふと我に返るとこちらを見つめる比奈へ視線を戻した。
――さっきのはいったい……?
「それよりも、雪子おばちゃんも元気にしているから早速会いに行ってあげて?」
「雪子おばさんが?」
しかし、一夏はその女性の名だけは覚えていた。と、いうよりも忘れられない大切な人だった。
その雪子という女性は、箒のおばである。そして一夏にとって母親のように母性溢れる女性であり、この地へ訪れなくなった四年生以降も、直接一夏の元を訪ねて彼の面倒をみたりもして、女尊男卑に苦しむ彼に取って唯一心を許した女性であり、また数少ない理解者でもあった。また、雪子はこの比奈という少女のおばにもあたる。
一夏は、比奈に連れられて社務所へ招かれた。久しぶりに会うので、いささか緊張する。
「雪子おばちゃん! 一夏ちゃんが来てくれたよ?」
社務所の一室で品の整理をしている着物姿の女性に茜が呼びかけると、女性は驚くかのようにこちらを振り向いて、慌
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