第十七話「いつかの記憶」
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…?」
空まで続くかのように長い石段を登り、境内へ入る。そこは、当時と変わらない風景である。
「ふぅ……やっぱこの石段は今になっても登るのはキツイぜ?」
額から流れる汗を拭うと、そのまま手水舎へ向かう。賽銭箱の前で願い事を言う前にちゃんと手と口をき読めないとな? ちなみに、小さいころ手水舎をスルーしたら箒が竹刀を振るってきたのは言うまでもない……
手水舎で、両手と口を清めて、一夏は本殿へと向かった。
賽銭箱前の石段を登って小銭を入れて鈴を鳴らした。そして、手を合わせる。
「……」
しかし、願い事を思うよりも先ほど見た夢の少女のことをが急に気になりだしてしまう。あの、幼いころ共に遊び回った少女は誰だろうと……
――何だ……妙にあの娘と居た残像が浮かび上がる。
境内を見回すと、そこには微かに、女の子と遊んだ記憶跡が浮かび上がる。しかし、そんな少女のことが妙に思いだせないでいる。
女尊男卑という風習が訪れて、一夏は今までの思い出を度重なる嫌な事と一緒に忘れ去ってしまった。彼のことを幼馴染と主張する箒や凰という少女達との記憶も、おそらくこの風習で経験した事と共に全て閉ざしたのだ……
「……」
今一度、一夏は境内の周辺を見渡した。やはり、あの少女と共に遊んだ記憶がある。
「あの子は、いったい……?」
そんな時、ふと背後からある少女の呼び声が聞こえた。
「あ、あの……!」
「……?」
そこには、一人の巫女がこちらを見ている。栗色のお下げを揺らした可愛い娘だ。おそらく、バイトの人だろう。
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「あ、コンチハー」
と言って、一夏はすぐソッポを向いて行ってしまった。
相手が女と見て、つい彼は女嫌いという悪い癖を出して、やや不愛想な態度を取ってしまった。
「あ……待って?」
だが、再び少女が呼び止める。
「……なんスか?」
と、一夏が鬱陶しそうな目で少女を見た。
「え、えっと……覚えてないかな?」
苦笑いして尋ねる巫女だが、一夏は平然と首を横に振る。
「うぅ……覚えてないの? 一夏ちゃん?」
「一夏ちゃん?」
その呼び名に、彼は夢で見たあの少女の呼び名を重ねた。似ている……
――いや、まさか……
しかし、それでも一夏はありえないと否定する。
「私だよ? ほら、小さいころ一緒に遊んだ式神比奈だよ?」
「式神……比奈?」
しかし、一夏の記憶の中にその名に見覚えのある人物は浮かんでこなかった。
「ごめん……知らないな?」
「うぅ……そんな……」
すると、比奈という少女は今にも泣きそうな顔をするものだから、一夏は慌ててしまう。
「い、いや……その? 何かな? 多分だけど、面影があるよ? うん!」
「ほ、本当ぅ……?」
と、泣くのを寸前でやめてこちらへつぶらな瞳を向け
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