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極彩色の花達
5部分:第五章
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第五章

「そのせいでお花を」
「そうです。貴方はそれが特に強いようで」
「その結果として」
「はい、そうです」
 まさにそうだというのだった。
「それでなのです」
「私もそうなのね」
 そして未来もわかったのだった。
「それでお花が好きで」
「そうです。花を嫌いな人はいませんが」
「そういう記憶があるから」
「それでなのですか」
「はい。私はそう考えています」
 そしてだ。ここで紳士は言ってきた。
「実は私はですね」
「私は?」
「どうなのですか?」
「医者でして」
 ここで自分のことも話すのだった。これは二人にとっては今はじめて知ることだった。しかし今はそのことをこれまでの話から素直に聞くことができた。
「しかも産婦人科でして」
「ああ、それでなんですか」
「こうしたことを」
「はい、研究していまして」
 医学の追求者だからこそだというのだ。
「それでなのです」
「そうだったのですか」
「成程」
「確かにいいものですね」
 医者は今度は周囲を見回していた。その周囲には様々な色の花が咲き誇っている。そうした花々を見ながらの言葉であった。
「こうして花達に囲まれているのは」
「落ち着くのはそういう理由だったんですね」
「お母さんのお腹の中にいた記憶で」
「そうです。人が落ち着くようになるのにも理由があります」
 医者が言うと実に絵になる言葉だった。
「ですから」
「ううん、何かお話を聞くと」
「そういうことだったんですね」
 亮治も未来もあらためて唸った。
「いや、そうした理由があったなんて」
「夢にも思いませんでした」
「ですが夢の記憶です」
 紳士はにこやかに笑ってその夢のことだと話すのだった。
「ですから」
「はい、それでですけれど」
「あの、いいですか?」
「はい?」
 紳士はここで二人の言葉に目を向けた。
「宜しかったら」
「今はお客さんもいませんし」
 店の中にいるのは三人だけだ。だからそれぞれ椅子を出してそこに座って話をしていたのだ。そしてここで亮治と未来が言ってきたのだ。
「いいですか?」
「コーヒーでも」
「コーヒーですか」
「紅茶もありますけれど」
「どっちが」
「いえ、それは」
 ここでは断る紳士であった。
「もう缶コーヒーを持っていまして」
「えっ、そうなんですか」
「もう持ってらしたんですか」
「はい」
 その通りだと言って頷く。頷きながらそのうえで実際に自分が持っているその黒い鞄から缶コーヒーを出してきた。そしてまた言うのだった。
「ですからお気遣いなく」
「そうですか」
「じゃあ私達も」
 二人も缶コーヒーを出して来た。紳士に合わせたのは一目瞭然だった。
「これで」
「飲みながらお話しましょ
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