九話:雪
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フォースは不思議な感情を覚えながら切嗣の隣に並び、話しかける。
「これも、人としての幸せなのかもしれないな」
「こうして散歩をすることがかい?」
「いや、誰かの隣を歩くということだ」
そう言って、彼女は同姓ですら見惚れるような微笑みを切嗣に向ける。
対する切嗣の方は自分という存在に笑みを向けられる資格などないとばかりに目を逸らす。
だが、彼女は相も変わらず笑みを彼に送り続けるのだった。
「私達が主の家族となるために生み出されたというお前の考えは目から鱗だった」
「ただの妄想さ。本当のところはわからない」
「だというのに、そう思ったのはお前自身が誰よりも私達を家族だと思ってくれているからではないのか?」
「……家族を殺すような男は家族とは呼べない。ただの殺人鬼さ」
どこか遠い場所を見るように呟く切嗣に、リインフォースはまた誤魔化そうとしていると直感する。
かつて、家族の前で嘘を貫き通した男。
しかし、その面影はもう見られない。どうしようもなく弱くなってしまった。
今にも擦り切れてしまいそうになりながら生きている。
心を許している相手の前では嘘を貫くとすらできなくなってしまった。
なのに、かつてよりも過酷で苛烈な正義を為さねばならない。
このままではそう遠くないうちに彼は壊れる。そう確信できるものがあった。
「お前は一人で旅をする時に最も恐ろしいことは孤独だと言ったな」
「ああ……それがどうしたのかい?」
「つまり、今のお前は―――孤独に怯えているのだな」
彼女の言葉に一瞬、否定しようとして口を開きかける切嗣だったが、すぐに口を閉じる。
何を言っても無駄だと悟り、せめて何も言わないことに決めたのだ。
だが、彼女にとってはそんなことは大したことではなかった。
彼がどこまで意地っ張りかなど、この一年で理解している。
彼女は逃げられないように、そっと彼の袖を摘まむ。
一瞬、ピクリと肩を動かす切嗣だったが、それ以上は何もしなかった。
「かつての、主はやてと出会う前のお前は本当の意味で一人でいられた。だから、孤独を感じることがなかった。孤独とは他者という存在があって初めて成り立つものだからな」
仮に、生まれてこの方自分以外の存在と出会ったことのない者が居るとしよう。
客観的に見ればそれは孤独だ。だが、その者は決して自分を孤独だとは思わない。
何故ならば、その者は他者という存在を知らぬ故に孤独という概念を理解できないからだ。
人の温もりを知らぬ者は己が孤独だということにすら気づけぬ程に悲しい。
「だが、お前は温かさを知ってしまった。二度とその温かさを忘れられぬほどに。その温かさが本当の意味でお前に孤独の冷たさを理解させた」
人の
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