九話:雪
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家族と触れ合うのは至極当然のこと。家族と食事を摂るのも当然のこと。
感情を共有するために涙を流すのも当然のこと。
目的が変われば、無意味な機能も必須の機能となり得る。
「つまり、八神はやてが最後の夜天の王となったのは必然だったというわけか。彼女だけが本来の守護騎士の、管制人格の、役割を理解していたのだから。くくく、実に素晴らしい娘に恵まれたものだね」
「僕にはもう……はやての父を名乗る資格はない」
「くふふ、そうかね。いや、こればかりは君個人の考えだ。私からはこれ以上は言えないね。では、失礼させてもらうよ」
苦虫を噛み潰したような顔でリインフォースから目を背ける切嗣。
その様子にさらに笑みを深めるスカリエッティだったものの、それ以上は話さずに踵を返して部屋から出ていく。
ウーノの方もそれに従う様に後を追っていく。
「今日の検査はこれで終わりです。ご自由にお過ごされてください」
そんなウーノの言葉を最後に二人の居る部屋からは音が失われてしまった。
だが、リインフォースには何故か不思議と不快感はなかった。
寧ろ、安心感を覚えるような、そんな暖かな感情が心を占めていた。
だからこそ自然と沈黙を破り、切嗣に声をかけるのだった。
「少し、外を歩かないか、切嗣」
現在、彼らが潜伏している世界では四季というものが存在している。
そして、日本と同じように現在の季節は冬。
あの日のように一面の銀世界がリインフォースと切嗣を迎える。
「やはり、世界は美しいな」
「……そうだね」
かつての自分では叶うことのなかった美しい世界を愛でるという行為。
だが、これからはそれを行うことができる。
リインフォースはその手で降り積もった雪を救い、ふわりと宙に投げ上げた。
舞い上がった雪はすぐに重力に従い、下に落ちて幾つかが彼女の頬に当たる。
「ふふ、冷たいな」
「そんな薄手で寒くはないのかい?」
「この冷たさを感じていたいのだ。それに私は―――」
―――機械なのだから体を壊すことはない。
そう続けようとしたところで切嗣のコートを掛けられる。
驚きに目を丸くするが、ついで嬉しそうに笑う。
「君は人間として生きると言ったはずだよ」
「そうだったな。すまない、まだ癖として残っているようだ」
「はぁ……君は女性なんだ。これからは自分の体をもっと労わらないと」
どこか呆れたように溜息を吐きながら切嗣は歩き出す。
つられてリインフォースも彼の黒いコートを体に巻き付けながら歩き始める。
しばらくの間、二人の間には雪が音を奪ったかのように会話が無くなる。
まるで世界には二人しかいないような、そんな錯覚すら覚える。
リイン
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