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極彩色の花達
3部分:第三章
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第三章

 その彼にだ。店長の娘の小さな女の子が声をかけてきた。伊藤未来という。目は少し離れているが非常にはっきりとした目であり色は雪の様に白い唇は薄く淡いピンク色である。顔全体が非常に整っており黒いロングヘアが似合っている。小柄でスリムな身体をしている。その彼女も一緒に働いていた。
 未来はいつもジーンズにエプロン姿だ。歳は亮治より一つ下で別の高校に通っている。よく彼に親しげに声をかけてくるのであった。
「ねえ、亮治さんってさ」
「何だ?」
「お花好きよね」
 このことを問うのだった。
「それもかなり」
「大好きだ」
 まさにそうだというのだった。
「こうして囲まれているだけで幸せになる」
「そうなの」
「どうしてかはわからない」
 それはだというのである。
「だが。落ち着く」
「そうなの。落ち着くの」
「そうだ。こうした花が好きだ」
「まあ趣味とか好みは人それぞれだからね」
 それについては言わない未来だった。しかしだった。
「それでもね」
「それでも?」
「何でなんだろうね」
 未来はその理由について思うのだった。
「確かにお花に囲まれてると落ち着くけれどね」
「何故だろうな」
「それがわからないのよ。ただ」
「ただ?」
「原因や理由があるのは間違いないわ」
 それはだというのである。
「それはどうしてかしらね」
「さてな。ただ」
「ただ?」
「生まれる前からここにいる気がする」
 亮治はこう言うのだった。
「こうした場所にだ」
「生まれる前からね」
「そうじゃないか」
「言われてみればそうね」
 未来も彼のその言葉に頷く。
「まあそのうちわかるかしら」
「そのうちか」
「今考えてもわからないのならそのうちわかるでしょ」
 いささか能天気に話すのであった。
「それでいいじゃない」
「随分適当だな」
「こういうことは適当でいいのよ。商売はしっかりじゃないといけないけれど」「そうだな。商売はな」
「じゃあ真面目にやるわよ」
「ああ」
 こんな話をしてから仕事を再開する。彼は未来と共に花に囲まれて満足していた。そうしたある日のことだった。不意に店にある客が来た。
 それは落ち着いた雰囲気の紳士だった。その彼が店に来てある花を買った。それは一輪の大きな蘭だった。それを買ったのである。
「いや、いい蘭ですね」
 買ってからの言葉だった。
「これは」
「いいですか」
「ああ、とてもいいですね」
 温和な笑顔で亮治に答えもした。
「じゃあまた来ます」
「またですか」
「いいお花が多い店ですから」
 その花の中を見回しての言葉だった。紳士は店の中に咲き誇るその花を見てだ。彼も満足していた。
「また」
「はい、また」
「いらして下さい」
 亮
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