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彼に似た星空
3.提督の生まれ故郷
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す。行く資格がないんです。青葉じゃなくて…金剛さんじゃないと…ダメなんです…」

 顔を見なくても分かる。青葉は今、涙をポロポロ流しながらも無理に笑っている。今私の腕の中で、体を震わせて3人がいなくなった悲しみに耐えながら、それでも笑顔でいようとする彼女が、このままでは壊れてしまいそうに感じた私は、青葉を抱きしめる両腕に力を込めた。彼女を壊さないように、でも彼女が壊れて崩れ落ちてしまわないように、優しく、でも力をこめて抱きしめた。

「約束しマス…青葉の分まで、テートクの故郷を見てきマス。ありがとう青葉」
「ありがとう金剛さん…ありがとうございます…恐縮です…ハハ…」
「ハイ…約束しマス…」
「司令官も…比叡さんも榛名さんも…なんで…みんな、なんでいなくなっちゃったんでしょうか…? ハハ…やっぱり……青葉がいけなかったんですかね…?」
「青葉は何も悪くないデス」
「青葉が…青葉が大破してなかったら、間に合ったんですかね? あの日、青葉が大破してなくて、青葉が全速力を出せていれば、司令官がいなくなっちゃうこともなくて、比叡さんと榛名さんも轟沈しなかったんですよね…? 青葉が悪いんですよね……?」
「ノー。青葉は何も悪くないデス。テートクが死んだのも、比叡と榛名が轟沈したのも…大丈夫。青葉のせいなんかじゃないデス」

―悪いのは私です
 彼を守れなかったのは、私です
 比叡と榛名を沈めたのは、私なんです

「だから自分を責めちゃ駄目デス。テートクも青葉がそんな風に考えてると知ったら悲しみマス。だからテートクのためにも、これからはジャーナリストとして頑張ってくだサイ」
「はい…司令官のためにも青葉、ジャーナリストとしてがんばります。だから金剛さん、私の分まで司令官の故郷を見てきてください」
「ハイ! 約束デス!」
「そして帰ってきたら、その話を青葉に聞かせてください。約束ですよ? 絶対ですよ?」

 私は自然と、青葉の頭を撫でていた。これは提督の真似だ。彼は、あのお茶会の日をきっかけに、私の頭をよく撫でてくれるようになった。私が活躍したときや、私が催促したとき、ちょっと困りながら、それでも笑顔で私を撫でてくれた。それがどれだけうれしく、元気が出る魔法だったかを知っていた私は自然と、青葉を元気づけるため、彼女の頭を撫でていた。

「金剛さん…司令官のマネですか?」
「Yes。青葉を元気にする魔法ネー」
「知ってますか?」
「何をデスカ?」
「それが司令官のマネだって分かるの、金剛さんと青葉以外だと、比叡さんと榛名さんと霧島さんだけですよ?」
「……そうなんデスカ?」
「はい。司令官、金剛さんの頭しか撫でてませんでしたから」

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