3.提督の生まれ故郷
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任せください!!」
お得意の敬礼のような遠くを眺めるようなポーズを笑顔で決めた後、青葉は先ほどの乗り継ぎ表をプリントアウトしてくれた。しばらくの間、ガーガーというプリンタの音だけが電算室に鳴り響いた。私と青葉の間に、少しだけ気まずい沈黙が流れる時間だった。
「金剛さんは、提督の生まれ故郷を見たあとはどうするんですか?」
「そうデスネー…まだそこまで考えてないデスけど…青葉はどうするんデスカ? 青葉も退役するんデスよね?」
「青葉は手始めに、あの鎮守府での生活を本に書いて出版します! 青葉、何を隠そうジャーナリストになりたかったんです! 本の出版はその第一歩です!」
「青葉が作ってくれてた“週刊青葉新報”、面白かったですからネー」
「恐縮ですっ! 司令官もそうおっしゃってくれてました! それに司令官やみなさんの生き方、もっといろんな人に知ってもらいたいなーって。こんな素敵な人たちがいたってことを、たくさんの人に知ってもらいたいなーって思ったんです」
私達二人は、生前の提督を思い出していた。彼は兵器として生まれた自分たちを大切にし、人間として扱ってくれた異質な存在だった。兵器である自分たちは、他にいくらでも代用の効く存在だ。事実、艦娘をモノとして扱い、多大な犠牲と引き換えに戦果を上げる鎮守府もあると聞く。
そんな中決して犠牲を認めず、轟沈を出さず、私達艦娘と共に笑い、時に悩み、一緒に歩んでくれたあの提督は、心優しくて少しだけ気の弱い、素敵な人格者だった。だから私達は彼に惹かれた。彼のために戦い、あの日まで、彼と共に足を揃えて歩んできた。
「なんかそれが……司令官や比叡さん、榛名さんに出来る、青葉のせめてもの罪滅ぼしかなって思うんですよね……本当は、司令官の生まれ故郷を青葉も見てみたかったんですけど……」
青葉はそう言うと、少しうつむき肩を震わせた。彼女は、あの日自分が大破していたことを、最後まで悔やんでいた。あの日のことを、自分が招いた惨事だと思い悩んでいたことを私は知っている。
「…でも青葉はダメなんです。青葉には荷が重すぎます。3人を死なせる原因になってしまった青葉には……」
そう言いながら顔を上げ、笑顔でこちらを見る青葉の目からは、涙が溢れていた。
「青葉…」
気がつくと、私は自然と青葉を抱きしめていた。重巡洋艦にカテゴライズされた艦娘たちの中でも、青葉はまだ体が小さい方だ。戦艦と空母に次ぐ鎮守府の大事な戦力となるはずだったが、こうして抱きしめると、彼女の体は本当に小さい。こんな小さな体で、青葉はあの日の責任をすべて受け止めようとしていたのだ。
「こういうことは……たった一人…司令官からケッコン指輪をもらった金剛さんじゃないとダメだって…青葉は思うんです。青葉じゃダメなんで
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