気付く不和の芽、気付かぬ不調
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想に毒されることになろうとも、それはまだマシな部類。何せ、この乱世で勝てなければ意味がない。壊されてしまっては、意味がない。
不和の元を放置して曹操軍との戦に臨むことこそ絶対にしてはならないことだ。何せ、相手はあの覇王と……」
瞳の奥には僅かな恐怖を。
孫呉の頭脳である冥琳が警戒を置くほどの朱里が、狂気を孕む程に恐怖し恋慕し求めているソレを、冥琳は恐れていた。
話を聞けば聞く程に恐ろしくなった。齎された利を理解すればする程に怖かった。
明命の持って帰ってきた情報を判断すれば、今回の小蓮の遠征は絶対に必要と思っていた。
「……あの紅揚羽を裏切らせた、黒麒麟だ。不和の一つでもあれば聡く読み切り、人の心に亀裂を見つければそれを利用する。あの狂人を裏切らせることが出来たのだ、こちらに裏切りが齎されない保障もない。
小蓮様自身が覇のモノを否定している為、黒麒麟が益州で何をしているかを見せれば小蓮様も敵対の意識を持てるだろう。あの方の内には大徳と呼ばれる彼奴への興味があった。
そして蓮華様だが、この次に曹操が打ってくる手の一つを考えれば、小蓮様と離れることこそ最善。きっと曹操は、蓮華様を荊州の牧に任ずる」
さすがの雪蓮も口を吐け放って絶句していた。祭に至っては冥琳に正気かと問いかけるような目を向ける。
そんな彼女達の驚愕を見て取って、冥琳はクイとメガネを上げて不敵に笑った。
「根拠はあるが……説明は数日後に来る曹操の使者の話を聞いてからとしよう。
来るのは郭嘉。今回は交渉というわけではなく、幾つかの通達と我らや揚州の状態把握、そして……先の戦の宣戦布告、だろうな」
一度だけ会った軍師を思い出して笑う。
食えない相手で、朱里と同じくらい手強い相手だと知っている。
最後の言葉で二人の表情も引き締まった。
「曹操軍との衝突は何時になる?」
「西涼を平定して暫らく経った後、始まりは荊州を、後に揚州に来るだろう」
「へぇ……益州を先に、とはいかないの?」
「悪龍と共に行った謁見が戦の理由になっている。蓮華様を荊州に送って戦力分散を図り、従わなければ我らの同類と見なして踏み潰す算段が一番有力だ。荊州さえ手に入れれば、どちらにも防衛戦を張れて侵攻の要にも出来るのだからな」
「……先に後顧の憂いを絶ってから来る、というわけか」
然り、頷く冥琳はつつましく酒を飲みほした。
「そうなると劉備軍が益州を手に入れるのに時間が掛かるのは拙い。黒麒麟の動きは先の戦を大前提として動いた長期戦略の一環。益州の平定に時間を使わせこちらとの足並みを揃わせず、兵力や兵糧も下げさせ……全てを掻き混ぜる強力な一手だ」
――どのような策を用いているのかは知らないが、たかが五千の兵数で戦など出来まい。使うな
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