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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四三話 帰想
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ないって事だから。
 だから、アイツはお前の代わりにはならないし、お前もアイツの代わりにはならない。―――唯一無二なんだ。」

 唯一つの拠り所、という意味でつけられた己の名の由来に近い言葉。
 無常、常がないという事だ。
 万物諸行無常、物事は常に変化、生滅を繰り返している―――言わば変化の連続性。常に変わり続けているがゆえに、同じ一瞬は絶対に存在しない。

 この、最小の時の単位における変化を表す言葉を刹那無常と呼ぶ。
 刹那は一瞬で消えて、次の刹那へと移り変わってしまうがゆえに、今は替えが効かない大切なものなのだ。

 今という時が絶対に替えが効かないように、唯依自身も彼にとっての刹那無常の刹那。唯一無二のモノであると彼は言った。



「アイツとお前を同一視したことはない。単なるきっかけ……だけど、そのきっかけがあったから俺はお前を見つけることが出来た。
 だから、そのきっかけをくれたアイツに、アイツと歩んできた之までに感謝と愛情の気持ちを持ち続けるのを……お前は許してくれるか…?」

 過ぎ去ってしまった刹那、その刹那があったからこそ今の刹那がある。
 そして今の刹那があるから、次の未来の刹那が訪れる。
 単に未来を求めるのではなく、過去があり、今があるから未来がある。故に、その過去の刹那を尊び続けて、今を確かに踏みしめて、未来へと足を進めたい。

 過去を捨てて未来へ……彼はそのような、変化の連続を断絶させたくないのだ。
 過去を過去とし、大切にしたまま未来へと歩んでいきたい、今この時を。


「………本当のことをいうと、忠亮さんの心にいるのは私だけがいいです。」

 唯依が腕の中で少し震える声で言う。彼女の気持ちはわかる、彼女の心に自分以外の誰かが居るというのは―――ひどく、心がざわつく。

「だけど、自分が愛していた人との思いを簡単に捨てれるような薄情な人は嫌いです。人として信用も出来ません。だから、それを大切に出来るのは尊いことだと思います。
 だけど―――」

 唯依が抱擁を振りほどく。そして、凛とした眼差しで見据えてくる。

「忠亮さん、貴方の言葉で言ってください。私をどう思っているのかを」

「……愛している。唯一無二のお前が愛おしい……!」
「はい、私も大好きです。……それだけあれば十分じゃないですか。」

 そう口にして彼女は笑う、遠い記憶、唯一色あせない鮮明に焼き付いた魂魄に焼き付いた記憶のままに。
 いつか―――君に話せる日が来るのだろうか。

 この荒唐無稽な御伽話(おとぎばなし)のような記憶を。未来への開闢の花と散った俺たちの物語を――――――

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